日曜日たち

Date
3月, 10, 2018

著者:吉田修一
出版社:講談社
発行日:2006年3月15日
形態:文庫

 

短編集。 1番目の話は、通勤途中に読んだ。 残りの話も、社会の一部を淡々と切り取って進んでいくのかな、という印象。

2番目以降は一気に読んだ。 読めてよかった、って清々しさを感じた。

伏線が徐々に肉付けされていくこと。 人々の思いと結果がずれること。 わからないものをわからないまま言葉にし、周囲と共有すること。周囲に投影すること。 つくりこまれた、希望あるラストシーン。

引っ越し屋さんのエピソードで思い出したこと。 私も数回引っ越しているけど、担当者に恵まれることが多かった。 荷物の運び出しが終わって、その日にも離れようとしている部屋で、 契約やら諸々の説明を、何もないフローリングの上で受ける。 相手が一通り話し終えて、私が署名をしてる時にぼそっと 「これで完了ですね」「新居が待ってますね」などと言われる。 カーテンがないから、太陽がまぶしくて目を細めるけど 最後に見とこうって、窓からの景色や部屋の様子を焼き付ける。 お互い、もう部屋出るしかないのに、なんかタイミングがつかめなくて 正座くずしたまま、立てなくて、ぼけっと外を見てる。

あの共有の時間って、サービスのひとつだったりするのかな。 軽快には動けない、少し感傷的なテンポを、 汲み取って、意図的に寄り添ってくれていたりするんだろか。

そんなことを思い出した本。