おうち企業制度と公式LINE

夫婦間の頼み事や家事ごとに会社をつくり、LINEグループやメールを使って「会社ごっこ」。夫は2社、私は6社経営中。

 

以前働いていたメーカーには、いわゆる本社機能の会社の他に、社内の清掃、出張・旅行のチケット手配、郵便、印刷、給食、保険、研修運営、翻訳、人材紹介などを担うグループ会社が数社あった。
その仕組みにヒントを得てつくったのが家での企業制度。
家で定期的に発生する仕事には会社をつくり、都度その会社にアウトソースするという形(設定)をとる。

たとえば、夫の海外出張準備には「たきじりトラベル」が活躍。
忙しくて余裕のない夫の依頼を受けて私が外貨両替に行ったり、パッキングしたり。
私がブログに写真を使うときは、だいたい夫の「エクセレントフォトサービス」に撮影を依頼。
おたがい得意なことを照らし合わせてできることをやっている感じで、関係はフラット。

 

この仕組みの好きな点は次のとおり:
■「ごっこ遊び」で楽しい。

■ 納品後、受領確認があってこそビジネス。「会社にアウトソースする」仕組みのおかげで、成果物の納品時には、都度必ず「ありがとう」が言語化される。

■「依頼する側」が、「いつもやってくれるから今回も何も言わなくてもやってくれるだろう」「これくらい当たり前にやってくれるだろう」といった安易な考えや雑な態度にならない。依頼と感謝を明言しないと、アウトソースの契約が成り立たない。

■「依頼を受ける側」が、「『いつもやってくれるから今回も何も言わなくてもやってくれるだろう』と思ってるだろうからやっとくけど、いつもそんなふうにやって当たり前の態度で、本当は不満を感じてるんだよ云々・・・」とか思わない。

 

企業公式アカウントと称したLINEグループをつくったり、業務によってはメニュー表、作業報告書を書いたりも。
業績によって倒産したり、マーケットのニーズを反映させて新しく立ち上げたりも。
どうやったらこの仕事がおもしろくなるだろうとか、夫婦のいい関係に繋がるだろうとか、場が和むだろうかとよく考えている。

 

我が家の会社一覧:

株式会社OTTOホールディングス
本社所在地:名古屋市たきじり家西区夫之間2-1 たきじりテクノロジーセンター
設立年:2019年
社風:堅実、柔軟、猫好き

<傘下企業>
エクセレントフォトサービス
写真撮影・編集処理代行。色の専門家による高品質なサービス。

 

システム班
機材調達、メンテナンス、修理、サーバー設計・保守、システム設計。Linuxが専門、フルスタック。たまに設計思想や新技術に関するセミナーを開催(@夕食時。おもしろい)。

Garminという活動量計の一機能、Body Battery。心拍、睡眠、運動量をもとに、どれくらいエネルギーを消耗したか、回復できたかを教えてくれる。互いの体調を気遣う目的で、2人分の情報を統合・表示するGarmin Window(通称ガーウィン)を開発。Garminがアプリに送っている情報を取りに行き、選択的に表示する仕組み。リサーチ・設計・実装を担当(企画・UI・評価はYOME)。

 

 

株式会社YOMEホールディングス
本社所在地:名古屋市たきじり家北区嫁之間1-3 たきじりライブラリーセンター
設立年:2019年
社風:唐突、すばやい、本格志向

<傘下企業>
チケットぴゅあ
チケット購入代行。私の名前が純なので。夫の「クラシックコンサートに行きたいが、チケットぴあでしか買えないことが多い。ぴあの支払い手続きは仕組みが面倒くさくて、結局買わないまま終わる」というニーズから設立。ぴあ以外でも手配可。キーワードを登録しておくと、とても質の高いレコメンドが届く。

 

たきじりトラベル
海外出張準備代行。ご指定の物品だけでなく、出張動線や体力、お疲れ予想などを総合的に考えてご提案。

 

ときめきスパークジョイ
お掃除・動線改善・衣替え代行。通称ときスパ。

 

深夜だいぶまえ食堂
お酒、おつまみ、夕食。ふたりとも深夜食堂のファンなので。「つくりたいものをつくる」「軽め」が営業方針。レモンサワーやブラックペッパーハイボールが売り。

 

純野家
牛丼屋。お客様のニーズに合わせたセットメニューをご用意。体調のすぐれない方には薬と白湯のセットが人気。

 

TAKIJILINK
イベント企画・制作。主な実績は、2013年アウトドアウェディング、2017年年賀状「あけましておめでとりめし」(*)、2019年「おうちごはん映画祭」。
*大分名物のとりめしのもとを作って冷凍、箱詰めし、クール便で送った親族向け年賀状。メーカーのサプライチェーンを模した夫婦共同プロジェクト。企画、購買、製造、評価、出荷、QM、コールセンター設置、新聞型パンフレットや裏話用ウェブサイト作成など。

 

 

昨今の状況で、夫の勤務する会社(←経営者じゃなくて従業員のほうの)でもリモートワークが始まった。
開発環境が職場と異なるので、やっぱりストレスが溜まる様子。
場所や通勤時間のような「気持ちを区切るきっかけ」もなく、大変そう。
そこで、普段のお弁当の代わりに「今日は12時に喫茶店で待ち合わせね」と「デート」の約束をしておいて、お昼にリビングでナポリタンを出したり、
終業時間手前に「深夜だいぶまえ食堂」からLINEを送り、キッチンカウンターにハイチェアを置いてバーカウンターにし、私が夕食を作っている間に対面でおつまみとドリンクを楽しんでもらったりしている。

リモートになっても、「いってらっしゃい」「いってきます」「おかえり」ただいま」のやりとりはあえて継続。
「ファン」の設定でドアから一定距離を置いて「出待ち」し、姿を現したタイミングで「きゃーっ!」と拍手、夫は芸能人のように笑顔で手を振る、みたいなバリエーションも。

要は、夫の頭が「仕事モード」のときに私が「ごっこ遊び」の即興芝居を始めてしまうようなものだけど、彼は一瞬ハッとした顔をしたあとニコニコ乗っかってくるので、切り替えの一助にはなっていると思う。
(私が落ち込んで気持ちを切り替えられないとき、夫が「ごっこ遊び」の即興芝居開始でユーモラスに気づかせてくれることもよくある。いずれにせよ唐突に始まり、相手は信じて乗っかる)

 

不安な日々が続く中、ついネガティブなものを過剰に膨らませることにエネルギーを費やしてしまいがち。
そっちに流れてしまうことに意識的でいるよう注意して、おもしろい暮らしをつくるために言葉や態度を選び、積み重ねていくほうにエネルギーをつかいたい。

Earl Grey never fails.

Amazon Primeで配信中の「スタートレック:ピカード」。
金曜日に新作が出るので、週末ふたりで楽しもう、
としていたのだけど、最初の数エピソードのあと、夫から「過去のドラマシリーズを知っておかないと十分に楽しめない」と助言を受けて中断した。
目下ひとりで離脱して、「新スタートレック」シリーズを航行中。

「スタートレック:ピカード」はその名の通り、「新スタートレック」シリーズで愛されたピカード艦長がメインの話。
ピカードがアールグレイのホットを好むからと毎日アールグレイを飲んでいる夫、そしてその姿を何年も見続けている私、ピカード×アールグレイのシーンは集中して見るし、台詞も英語でよく聴く。
だいぶ歳を重ねたピカードが、新作でデカフェを飲むようになっていてふたりで興奮した。
“Earl Grey never fails.”(アールグレイは間違いない)という台詞は、夫の心を強烈につかんだ。
おかげで何度家で聞いたか知らない。

 

ある日の午後、スーパーへ買い物に行った。
イヤフォンをつけて、ELLEGARDENの曲をシャッフルしながら過ごした。
レジで会計を始めたとき、 ‘Mr.Feather’ のイントロが流れ始めた。
Mr.+形容詞の使い方が好きな曲である。

Hey Mr. Feather do you think you’re really fly
Mr. Clever she is fool enough to trust you
Mr. Stupid you are not like anyone
Mr. Famous I don’t know your real name
Mr. Tiny your dream is so big

カゴを移動して袋詰めを始めたとき、サビになる。

Give me something that I’ll never fail
Give me something that I understand
Give me something that I’ll never lose again

私は「アールグレイやで」と声に出さずに返した。
コロナクラスターが近くにある地区の、人がそれなりに密集するレジ付近。
すみやかに店を出たいから、曲を聴きながらも、エコバッグの中のうまいポジショニングとスピードを両立させるために手と頭をぞんぶんに使う。
この文脈での、とっさの「アールグレイやで」である。

無意識レベルに染み込んだスタートレックに驚いて、外出の緊張感がふっとほぐれた。
ピカード大好き人間のパートナーとして誇りすら感じる。

店の外でLINEして、家路を急いだ。

おうちごはん映画祭

GWはフェスごっこ。家でとびきりの思い出をつくる実験。

 

たきじり家 おうちごはん映画祭 公式ウェブサイト
https://t-gmf.tumblr.com/

 

混雑が苦手なので、連休だからと遠出はしない。10日間家にいるのねーと思うと、何か企画したい気持ちが起こる。そして、去年の夏に風邪で中止した「おうちごはん映画祭」の構想を思い出す。

祭といっても、要はごはんをつくって食べて映画を観るだけなのだが、それっぽいパンフレットや招待メールを使うことで特別感を演出できる。

夏のパンフレットを夫はよろこんでくれた。たぶんつくりなおして渡してもよろこぶ。だけどそれでは私がつまらない。おうちごはん映画祭をやろうという話になったときに、彼は当然「またパンフレットとかつくってあそぶんだろうな」と思ったはずだ。私はその期待を裏切らなければいけない。新しいアイデアをつくり、技術を習得して、昨年の私たちを越えなければならない。星野源もそう歌ってる。

というわけで、公式サイトからグッズ、チケット申し込みの流れまで、本物のフェスのようにつくりこんでみた。つくりたいイメージは明確でも、技術が伴わないので時間がかかる。tumblrはすべてのテンプレートサンプルを試し、設定をいじり倒した。グッズづくりの機械の使い方も一から覚えた。たまに冷えた頭で立ち止まり、「私何やってんだろう」と思ったりした。

夫は公開されたウェブサイトを見てしばらく唖然とし、「またやっちまったんだな」とでも言いたげに笑った。開幕が近づくにつれ、楽しみな気持ちを徐々に膨らませているようだった。先立つ10日間、すでに準備で楽しさを満喫し、そろそろ疲れが出てきた私とは若干の温度差があった。それも私たちらしいと思った。

祭が始まると、彼は特別なお酒を飲むみたいに大事に楽しんでくれた。それを見ておなかが胸がいっぱいになった。ごっこあそびし続けた5日間、共によく疲れた。やりきった。

忘れたころ、おかわりしてもいいかもね。

 

 

新しい言葉をつくっちゃえ!

正しい言葉遣いも大切だけど、言葉を新しくつくったり遊んだりするのも楽しい。フィールドワークで抽出された我が家の用語集と、浮かび上がった詩。

 

Family lexicon is:
– a bundle of old love letters
– important energy
– regular exercise
– playing in a particular style
– to relax completely and enjoy
– to understand or respect other people’s ideas and behaviour
– supporting changes in some systems that give people more freedom

ファミリーレキシコンは
何度も読み返したラブレターの束
大切なエネルギー
いつもやってるエクササイズ
こだわりの遊び
うんとくつろいで楽しむこと
相手の考えや行動を理解すること、敬うこと
もっと自由なシステムに変えていくこと

by たきじり(Longman Active Study Dictionary 5th edition、 “lexicon”掲載ページ、見開きで見つけた単語から作成(写真の蛍光ペン部分))

 

オースティン・クレオンさんちのオーウェンくん(6歳)は、お父さんの影響で、自分で絵を描いたり、音楽やzineをつくったりしている。かわいいので、私も新作を楽しみにしている。このツイートにも「いいね」した。

訳すなら、「 “Loveheart”は今や我が家の定番の言葉です」。 “lexicon”は、「ある特定の個人・領域などにおける用語集」のこと。本屋で買える「正式な辞書」には載っていないけど、オーウェンくんが母の日やバレンタインで使うので「オースティン家の辞書」には載っている言葉だという意味。

「ファミリーレキシコン」、我が家(2人暮らし)ではどうだろうとフィールドワークを始めた。普段通りの生活の中に観察者の自分を置き、会話の分析と記録を続けた。

あまり意識していなかったが、我が家は言葉の積極的な開発と便乗が推奨される環境である。新しい単語や意味が意図的に、事故的に、偶然にひょいひょい生まれ、流行り、廃れていく。音や意味の変化を経て定着に至ったものもある。書き言葉よりも話し言葉のほうが発達している。

 

うちのファミリーレキシコン
(各項目の最後は例文)

こてね
仕事がうまくいった、楽しいことがあったなどで精神的に満たされている、ほどよい身体的疲労がある、おいしいごはんを食べる、酒を一定量以上飲む、という条件がそろった上で、風呂に入る前にこてんと寝てしまうこと。ぎりぎりまで「お風呂には入るよ」「横になってるだけで眠ってない」とつぶやき続け、最終的には相手に嘘をつく。幸せそうな顔に免じて、ごくたまにであれば許される行為。「こてんね」からの音変化。

「昨日はこてねしてごめん。ほんとうに反省してる」

 

ぽてね
夫が、山盛りのポテトサラダを食べたあと、こてねに至ること。ポテトサラダはカロリーが高いため、こてねしないことを条件に提供されることが多く、こてねと違って重罪である。

「ぽてねするって、人としてどうなの?」

 

解体/解除
妻が洗ってカゴに積んだ食器を、夫が元の場所に戻すこと。心ここにあらずで気が急いている場合、いつもの場所とは違う場所に積まれた皿で、ピサの斜塔が建つ。2種類あるのは、初回の聞き間違いによる。どちらも譲らずどちらも定着。

「これつくってる間に、解体しといてくれないかな」
「わかった、解除する!」

 

接触不良
道具、とりわけ台所用品が妻の手のサイズや目的、作業動線に合わないこと。

「卵焼き器、接触不良だったんだけど、小さいものに変えたらめっちゃ使いやすくて楽しくなったーーー!!」

 

人気者
風邪っぴき、病人。ウイルスからモテモテの状態。

「だから言ったじゃん、寒い格好しちゃだめだって」
「ほら、ぼく人気者だから仕方ないよ」

 

自由研究
きらめくアイデアに心を踊らせ、夜や週末などのあるひとかたまりの時間、自室にこもって実験やものづくりにいそしむこと。夫のは今仕事で必要なことの数歩先のこと。あるいは関係があるかはわからないが、すごい発明に思えるもの。妻のは書きもの調べもの。専門を別にしながらも、発生したエネルギーには敬意を払いたいので、研究終了後の会話には「おうむ返し」のルールを採用している。

「今日はサーバの自由研究をしたんだ!(中略)すごいでしょ!」
「サーバの自由研究をしたんだね!それはすごいね!」
「そう思うよねー!うんうん」
(ここまでセット)

 

刺す
夫が、自分のヒゲが伸びているのをわかっていて、顔を妻に近づけようとすること。脅し文句だが、対する返答も脅し文句になることが多い。

「いっしょに行ってくれなきゃ刺すよ」
「夕飯出さないよ」

 

業務委託
得意なことを任せること。キッチンとネットワークは年間包括契約、それ以外は個別契約。

「これ、業務委託したいんだけど」

 

パスタマイスター
夫の肩書きのひとつ。役職が人を育てる。お湯を沸かし、塩と麺を計量し、鍋に入れ、タイマーをセットし、茹で、ざるにあげる一連の流れを担当する高度技術専門職。ソースやサラダは専門外のため、任務終了後はカトラリー設置部門へ異動。

「パスタマイスター、そろそろ出勤のお時間です」

 

同期
街の屋外ディスプレイでスーモの広告が流れ始めた瞬間に、妻がMacBookに繋がれたiPhoneのように、スーモの歌を口ずさみ始めること。

「スモスモスモスモスモスモスーモ♪」
「同期したね」

 

キーステーション
旅行先で起点にする駅。近くに宿泊することが多い。

「今回の旅は広島駅をキーステーションにお送りしましょう」

 

潜入
地下も含めて何階もあるような大きな建物に2人で入る場合に、夫が使う。悪いことをしていないのに悪いことをしている気持ちになる。

「さあ着いた。潜入するよ」

 

調査
店で品物を見てまわること。「潜入」と合わせ、スパイ色が強くなる理由は不明。

「今日はあのパン屋を調査しなきゃ」

 

毎日言葉遊びをしているような、即興芝居をけしかけているような、機転を試しあっているような感じだな。負けないぞ。

 

 

無印の絵本ノートでつくる旅のしおり

旅のしおり、型紙の覚え書き。無印の絵本ノート向け、カバーと印刷アイデア。

 

9月の終わり、大阪へ観劇に出かけることになった。久しぶりに観光もしようと、夫から「旅のしおり」作成を依頼された。

昔は、印刷した紙を折ってホッチキス止めする、修学旅行で使うようなしおりをつくっていた。ルーズリーフに貼ってリボンでまとめたり、じゃばらに折るタイプに凝ったりもした。

新卒でメーカーに入った私たちは、家のことも仕事のように、企画から製造までをプロジェクト化して遊ぶのが好きだ。旅のしおりに関しても、何度かつくったのち、旅行の一連の動線を見直し、問題点を洗い出し、改善策を考え、仕組み化し、品質改善に取り組んだ。

 

【問題点】
・旅でガシガシ使うため、帰り着く頃にはボロボロに汚くなる。
・薄いので、旅のあとに家の中で紛失する。
・しおり!と意気込んでも、実はスケジュールと持ち物以外のネタに困る。いつも同じものをつくるのは、私の気持ちが上がらない。
・ちょっとした旅の思い出アイテム、例えばチケット、レシート、プリクラ、ミニパンフレットなどを、机のそばの棚に放置してほこりをかぶせがち(なので私はわりと写真に撮って捨てるのだけど、夫は写真に撮ったうえで残しておく)。
・観光本や地図も併用するので、かばんからあれを出しこれを出しと忙しい。

【しおりに求めるポイント】
・「いつまでも大事にしておきたい感」がある。
・汚れにくく、耐久性がある。
・旅の期間もそのあとも、情報を一元化できる。
・毎回、何かしらの「新しい取り組み」を実現できる。製造のときに作り手が新しい技術にチャレンジできる、かつ、出荷後 読み手が新しい視点を得られるように、「フォーマットに乗っかる部分」と「都度新しい部分」が共存する仕組みにしておきたい。行き当たりばったりではなく、「どう考えてつくるか」をあらかじめ決めておくことで、全体的な工数削減、およびプロセス改善をおこないやすくしたい。

【タキジリ家の旅のしおりのポイント】
・無印良品の絵本ノートに、都度カバーをつくって使う。
→汚れたら洗える。カバーに旅の思い出を挟んで保存できる。かわいいので読み返したくなる、大事にしたくなる。適度な厚みで失くさない。
・旅のしおりを雑誌だと考える。
→基本的なスケジュール、持ち物リスト、地図に加え、旅のコンセプト、事前学習ページ、関連コラム、うらばなし、クイズ、広告のページを設ける。
・感想を書き込むページをつくる。
→日帰り~1泊2日であれば1ヵ所、長期であれば日ごと+総括のページを設ける。いちばん忘却しやすく、読み返していちばんおもしろいページ。

 

というわけで、以下、今回の1泊2日@大阪の旅のしおり作成フローである。

1  企画会議
2 設計
3 調達
4 製造
5 品質検査
6 出荷
7 ユーザーレビュー

 

1 企画会議
いつもピンポイントで、どちらかの「これを見よう」「あれ食べよう」から話が始まるので、大きなところからふたりで考える。旅のテーマは何か、いちばん優先したいことは何か。今回は観劇と、夫の希望で「平日の猫カフェ訪問」がメイン。日程を決めたら予算確認、役割分担。夫が宿泊や交通、チケットなどの渉外業務、私がしおりの企画・製造、持ちものを含む調達。こまめに情報共有し、随時互いの仕事に反映させる。

 

2 設計
無印の絵本ノートでつくるのは2回目。今後型紙として使いまわせるよう、今回は意識してマニュアル化。

<カバー設計工程>
A4用紙を2枚貼り合わせ、次のような折り目付きの型紙をつくる。マルマンのノート「ニーモシネ A4 方眼」を使用。一度つくっておけば、繰り返し使える。私の好みと、製図のしやすさで、ノートにぴちぴちにフィットする設計である。ゆとりが欲しい場合には27 cmの部分を+5 mm、14 cmの部分を+5 mm追加されたし。14 cm+5 mmにする場合は、3.5 cmの部分をそれぞれ3 cmにすると、A4用紙の幅(21 cm)に収まる。

単位はcm

 

<コンテンツ設計工程>
目次をつくる。ページ数は表紙・見返し各1枚、本文12枚。

P.1 表紙
P.2 旅の予定
P.3 各自の持ちものリスト
P.4-5 バス情報(発車時刻、号数、座席番号、バスターミナル地図)
P.6 ホテル地図
P.7 サルトル「出口なし」公演概要
P.8-9 会場情報(建築思想、地図)
P.10-11 ネコリパブリック情報(概要、入国手続き、料金システム)
P.12-17 たこ焼き情報×3店舗(味のポイント、歴史、地図、写真)
P.18-19 プーシキン展情報(展示概要、国立国際美術館へのアクセス)
P.20-25 予習ページ:「サルトル氏の『実存は本質に先立つ』」
P.26 偽広告(くくるの9月限定たこ焼き、「とろーりチーズもちたこ焼き」キャプチャ)
P.27 旅の感想
P.28 出版に関する情報(出版日、出版者、参照元、なんちゃってコピーライト)

 

前回は全ページを手書きにしたので、今回は印刷にした。まずパワーポイントで枠組みをつくる。あらかじめスライドのサイズを12.5 cmに設定しておく。こうすることで、スライドに画像を入れ、収まるように拡大縮小すれば、そのまま印刷してノートに貼ることができる。オフィシャルサイトの写真、スクリーンショット、地図、自分で撮った写真など。印刷で荒くならないよう、ある程度大きくて鮮明なデータを使う。

グラフィックデザインが欲しいところには、Canvaの無料素材を使用(参考資料1)。

コラムはパワーポイントのテキストボックスで作成。サルトルの戯曲、「出口なし」を観に行くので、彼の「実存主義哲学」の要点をおさえられるよう、植村光雄著『てつがくのえほん』の引用を使って紹介。

会場は、大阪駅近くのサンケイホールブリーゼ。建築思想が興味深かったので、1ページ分掲載。

出来上がったら、PDF形式で、USBなどの外部記録媒体に保存する。

 

3 調達
無印良品で「画用紙絵本ノート 小・12枚・約130×130 mm」を購入。税込290円(参考資料2)。無印会員であれば、年に数回の無印良品週間にまとめて購入することで、10%のコスト削減が可能。

布は、ペラペラ薄い綿生地。リバティ柄を数十センチ分購入。柄にもよるが、大体500円弱。厚い生地だと上述の設計図では製造不可。

糸は、布に似た色のミシン糸。シャッペスパンの#60、普通地用をひとつ。200円弱。

 

4 製造
<コンテンツ製造工程>
STEP 1 印刷
ローソンかファミリーマートにある、シャープ製のマルチコピー機を使用(セブンイレブンのゼロックス機では未検証)。外部記録媒体から、「PDFプリント」。B5用紙、2in1(2枚分の原稿を1枚に印刷)、片面印刷。カラー50円、モノクロ10円、ページによって分けて印刷。

STEP 2 切り取り・貼り付け
上述の手順のように、パワーポイントのスライドを12.5 cm×12.5 cmに設定し、PDFにし、B5用紙に2in1で印刷すれば、原稿を切ってそのままノートに貼れる。ベタつき防止のため、のりよりも両面テープを推奨。ページによって、切り抜き方、貼り方を変えるのもよし。マスキングテープやシール、色鉛筆、マーカーなどで追加デコレーションするもよし。

 

<カバー製造工程>
型紙をきっちりつくっておくことと、こまめに折り目をつけること、アイロンを使うことが、簡単に綺麗なカバーをつくるこつ。

STEP 1
布を広げ、よく折り目をつけた型紙を置く。たるみができないように、かつ折り目に重ならないように、待ち針で止める。チャコペンや鉛筆で、布に型紙の輪郭を写す。あとでその線に沿って切れるよう、できるだけ途切れさせない。

STEP 2
型紙の折り目に沿って、型紙を内にする形で、布と一緒に折り曲げる。布が伸びない程度に、へらで全ての折り目をつける。

STEP 3
待ち針と型紙を外し、先ほど引いた輪郭線で布を裁断する。そのうえで、全ての折り目にアイロンをかける。

STEP 4
四隅を、少し斜め三角に折り曲げて、アイロンをかける。あとで折りたたみやすくなる。

STEP 5
完全には折りたたまない下記の状態にし、布の端から5mmくらいの幅で、一周ぐるっとミシンをかける。ミシンを使わず、STEP 6の4ヵ所縫いだけでもカバーにはなるが、ミシンをかけたほうが綺麗で丈夫。

STEP 6
折りたたんで、待ち針で固定し、写真の青線部分4ヵ所を浅いブランケットステッチで始末する(ステッチの動画は参考資料3へ)。先ほどと同じミシン糸で二本取り。簡単にかがり縫いや、あえて違う色の糸を使うのもよし。ここもミシンで縫いたい場合には、型紙設計時に余裕をもたせ、縫う前にノートが入るか確認を。

STEP 7
最後にアイロンをかけ、しわを取る。

 

5 品質検査
ノートとカバーを合体させ、うまく開くか、糸の不始末はないかなどを確認。本来は引っ張ったり、冷やしたり、熱したり、何千回と開閉を繰り返したりしなければならないところが、全数(といっても1だが)検査、目視検査のみ。

 

6 出荷
夫に渡す。夫が読む。よろこぶのを見て私もよろこぶ。旅に出る前、この時点までで、ふたりしてこんなに楽しめるのだ。すごくエコでお得な感じがする。

 

7 ユーザーレビュー
実際に旅の準備、旅の最中に使う。旅が終わったら、感想ページに感想を綴る。旅の思い出は、カバーに挟んでおく。こういうページがあったらよかった、次はこんな旅にしたい云々があれば、メモに残し、合わせて挟む。あとで読み返すと楽しい。

スタンプラリーのように、巡るスポットで都度何かを書き込めるしおりや、しかけ絵本のようなしおり、クロスステッチのカバーのしおり、「15ページに飛べ」と書いてあるようなゲーム絵本みたいなしおり、かるたになるしおり、全て暗号やナンプレからなるしおり、コラージュでできたしおり、QRコードで自作のwebページやアプリと連携できるしおり、お互いに詳細を秘密にしてつくって交換し、どこかで待ち合わせるしおり、何かしらのシリーズもののしおりもいいなあと思っている。

どの旅も、「なかよしでいよう」という大目的はあらかじめ決まっている。というか、ふたりでいる暮らし自体がそうだ。どう歩き、希求し続けるか。今のところの私たちは、いっしょにつくる、わりとガチでつくる、新しいことに挑戦する、PDCAをまわす、という手段がとても楽しい。普段はゆるく、無計画で、抽象的な話で盛り上がり、個々の世界にいる分、たまに形あるものに集中することでバランスを取っているのかもしれない。

 

 

参考資料

1 Canva
https://about.canva.com/ja_jp/

2 無印良品 画用紙絵本ノート 小・12枚・約130×130mm
https://www.muji.net/store/cmdty/detail/4548718800667

3 武庫川女子大学生活環境学科・生活造形学科
デジタル教材 基礎縫い編 ブランケットステッチ
http://www.mukogawa-u.ac.jp/~kankyo/laboratory/edu/d_kyozai/kisonui/sew10/sew10.html