目玉焼きに置換する

 

壁一面に敷き詰められた目玉焼き

今日は目玉焼きから直帰します

寒い朝、目玉焼きが氷っていた

TOEIC頻出目玉焼き300

大安だから目玉焼き買っとこう

目玉焼きの木陰で過ごした夏休み

足を肩幅に広げ、深呼吸、目玉焼きのポーズ

各地でGo To 目玉焼きトラブル相次ぐ

Please fasten your medamayaki.

目玉焼きか目玉焼きかで悩む

 

 

魔法瓶みたいな日

 

健康診断の日。
出かけるまでに時間があったので、荒川洋治の本を読んだ。
紹介されていた詩のひとつに心をわしづかみにされる。
健診前、心拍が上がりっぱなしで困る。

 

病院までの道では音楽をかけて、待合室ではテレビを眺めていても、頭のなかはさっきの詩のことばかり。
おかげで番号を呼ばれても気づかないことたびたび。
一概に詩といっても、まったくわからない、何も感じないものも多いのだけど、たまにすごい速さのボールを予期せぬ角度で打ってくるものがある。

 

常々、言葉の種類には表現重視のものと伝達重視のものがあると思っている。
表現重視のものは、何かを存在させるためのもの、何かをつくりだすためのもので、人に伝えることは二の次というか、わかってもらえてもわかってもらえなくても気にしない。主眼がそこにない感じ。
伝達重視のものは、人に何かを伝えるためのもので、人にわかってもらえないとだめなので、わかりやすく、キャッチーに、という指向性。
資本主義の世の中では、伝達重視の言葉が便利だし、重宝される。

 

荒川洋治がいくつもの本で、このふたつを「詩」と「散文」で言い換えていた。
表現重視の、詩のほうが、言葉としては自然であると。
言葉には2種類あることと、表現用のほうをより重視すること(排除されやすい表現用も大切だということ)を言っている人を知らなかったので、とても励まされた。

 

私はたぶん詩寄りだ。
昔から、人にわかってもらおうとするところからは書いてない。
(わかってもらえないに決まってる、というような刺々しい意味ではない。
「人に伝えることを先に考えて、そこから逆算した結果を重視して形をつくること」をしない)
わかりにくいから悪文、とは思わない。
読んでもらえない=意味がないとは思わない。
金に結びつけたいとも考えない。
読まれない、理解されない、儲からないのが前提。

 

短い言葉の集積による興奮が冷めない、魔法瓶みたいな日がある。
文章でつらつら書くまでではないけれど、瞬間的にガッと生じた感情をそのまま切り取って、パッと配置して、圧縮なり冷却なりしたくなること、形にできたらハイ!おしまい!今日はいい日!と言える日がある。
そんな日は、自分が存在している実感がある。

 

夕食の席で、ひとつの詩に占領された話、詩と散文の話を夫にした。
「きみの言葉はパブリックじゃないってことだね」は、褒め言葉。
「今日はそこに “いる” 感じがする」は、私と同じ感想。
私にぴったりの表現で、思わずハイタッチと握手をした。

 

“パブリックでない” と、私は “いる” ことができる。

 

口止め

 

えびせんの袋に口止めシールがついていた。
ぱっと「口止め」だけが目に入ったばっかりに、うっかり「食べたことをえびせんに口止め?」っていう問いを経由したんだ。
と夫に話したら
「罪悪感があるってことだな」と返された。

ひとりじめするはずだったえびせんを少し分け、共犯にした。

テレ花見

 

1週間前。
人がいない神社の隅で
私はアイス、夫はからあげ棒を手に3分咲きの桜をしばし楽しんだ。

今日、買い出しついでの外出。
私は大きなツナマヨおむすびを豪快に
夫はウインナーのソテーを丁寧につくって出かけた。
名所で知られる公園の桜は満開、人もいっぱい。
いつもはここで花見をするのだけど
今年は遠くから眺めるにとどめて通り過ぎ、川沿いに向かう。

土手の階段に座る。
3ブロック先あたりに桜の木が見える。
気温がちょうどよくて、風が心地よくて、見晴らしがよくて、静かで、
「テレ花見だ」と名づけて笑った。

久々の「外食」、楽しかったなあ。

 

Preloved

辞書はわからない言葉を引くためのものだけど、意味が予想できていて、あえて引くときもある。
文章を早く読むなら知らない単語の意味の推測は不可欠で、推測で事足りるならいちいち調べなくていいんだけど、
カフェでお茶やインテリアを楽しむのに似て、辞書に書かれてあることをじっくり読みたい時、しばらくそこに留まりたい時がある。

以前愛された、だから、中古かな。あたり。
「以前は人のものだった」の意味で、家やペットに対して。

婉曲的で、あまり使われない言葉。
「中古」の類語で引いても、出てこない言葉。
偶然、辞書の隙間に入り込んだみたい。

珍しく遅くまで出歩いた日、ネオンや提灯で光る町の中、もう誰も住んでいない家を見かけた。
起き抜けに窓を開けたり、部屋のすみずみを掃除したりする誰かにprelovedされたんだろうと、信号待ちの間だけ思った。