written by Jorge Luis Borges, 1949
translated by Andrew Hurley
ギリシャ神話をもとに書かれた、短い話。こういう見方をしたら、どうなっていたか。
英語で読んでいたく感動したので、日本語も買って読んでみた。文章から受ける印象が全然違う。英語は”I”の語りが私と近い感じで、親近感がある。日本語で読むと終始硬くて、遠い、恐れ多い感じがする。英語は文法も単語もあまり難しくない。各語をどう解釈するかということなんだろうか。私はもとの話をあまり知らなかったので、「親近感を抱いて読み進めていたら、おおお、怪物の話だった」という経験がおもしろかった。
調べたら、原文はスペイン語。英語に翻訳されたものを読んだってことだ。日本語でも複数の訳があるので、英語もあるのかしらと探したら、あった。使われている言葉や並びが少し違う。大学の授業で読んだものは、「英文学」「米文学」のカテゴリに収まるものだったので、「英語で直に書かれたもの」を読むことしかしなかった。原文＝英語が当たり前だったように思う。古代・中世の英語を読んでいるときも、英語だとしか思ってなかった。現代英語とは違うのだから、「現代英語に訳されたもの」を読んでいるのだ、という考え方をしておけばよかった。今になって、世界の文学を英語で読む教科書を手に入れて、「英語に訳されたもの」を読むことになり、英語で直に書かれているのが当たり前じゃない、と気づくのは遅い。
アステリオンがラビュリントス（複雑な構造の建物）でどんな風に過ごすかの描写。
Of course I do not lack for distractions. Sometimes I run like a charging ram through the halls of stone until I tumble dizzily to the ground; sometimes I crouch in the shadow of a wellhead or at a corner in one of the corridors and pretend I am being hunted. There are rooftops from which I can hurl myself until I am bloody. I can pretend anytime I like that I am fall asleep, and lie with my eyes closed and my breathing heavy. (Sometimes I actually fall asleep; sometimes by the time I open my eyes, the color of the day has changed.) But of all the games, the one I like best is pretending that there is another Asterion. I pretend that he has come to visit me, and I show him around the house. (…) Sometimes I make a mistake and the two of us have a good laugh over it.
生贄が届くのを “I can free them from all evil” （私が不幸から解放してあげられるから）と言うところ。Lusus Naturae もそうだけど、モンスターが思っていることと、人間が思っていることには、ズレがありうるのだ。この話のアステリオンは生贄を食べたくて欲しがってるんじゃない。テセウスが来たときの反応も、殺されたくないというよりも、救済としての死を求める気持ちだったように思える。
Every nine years, nine men come into the house so that I can free them from all evil. I hear their footsteps or their voices far away in the galleries of stone, and I run joyously to find them. The ceremony lasts but a few minutes. One after another, they fall, without my ever having to bloody my hands.
Photo by Arfan Abdulazeez on Unsplash
