詩という仕事について

Date
3月, 12, 2018

著者:J. L. ボルヘス
訳者:鼓直
出版社:岩波書店

発行日:2011年6月16日
形態:文庫

 

本屋でまとめ買いした本、のひとつ。表紙の写真に惹かれて手にとった。まなざしがきれい。

学者としての詩論じゃなくて、作家としての講義録。詩の引用・解釈・批評が長々と続いていなかったのが、意外だった。章のテーマに関する詩例がたんたんと並べられて、シンプルな説明があって、次に移って。結論を、形を変えて何度も言いかえてくれる感じ。

「私が感謝しているのは、物を書くという営みが一種の共同作業であるからです。つまり、読み手もその作品に関与する。その本を豊かなものにするのです」

「そこにいていいよ。むしろ、」と読み手に語りかけている感じ。

「私は物を書くとき、自分のことはすべて忘れるように努めます。私自身の個人的な事情は忘れます。かつてはそんなこともありましたが、「ラテンアメリカ作家」たろうとはしません。私はただ、夢とは何かを伝えようと努めます。そして仮にその夢が曖昧なものであっても、それを美化すること、あるいは理解することもいたしません」

今の自分を定義することにどんな意味があるのか、 立ち止まって足下を見ていることと、ひとまず進んで道に迷うことと、どっちを好むか。過去と未来をふりきって、現在に集中できるといい。

ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』を読んでいて、「自分」が消えちゃって。大学の先輩に話したら、にんまりされたこと。ふっと思い出した。でももいっかいサルトルよみたい。