若い読者のための世界史(下)ー原始から現代までー

Date
10月, 14, 2018

著者:エルンスト・H・ゴンブリッチ
訳者:中山典夫
出版社:中央公論新社
発行日:2012年4月25日
形態:文庫

 

この上下巻は、「五〇年後のあとがき」を読むためにあるんじゃないかと思う。

1935年の著者は、よりよい未来を希求しながら、第一次世界大戦後までの歴史を書き上げた。だが、人間の愚行は繰り返されてしまった。最初の出版から50年経って再出版するにあたり、「五〇年後のあとがき」を追加している。

「この悲しい『あとがき』で私は、先行のある箇所を引用しなければなりません。スペイン人によるメキシコ征服について述べた箇所です。『スペイン人は、メキシコだけでなくアメリカの他の地でも、身の毛もよだつやり方で、伝統ある文化をもつ先住民を根こそぎにすることをはじめた。人間の歴史のなかのこの章は、ゆるされるならばわたしも触れたくないと思うほど、ヨーロッパ人にとっておそろしく、恥ずかしいものなのだ』(下巻五〇ページ)と、私は書きました。この半世紀になされたあの最大の悪行についても、できることなら黙していたい。というのは、結局この本は若者のために書かれたのであり、若者には、もっとも忌むべきことは避けさせてやりたいと思うからです。しかし子どももいずれは成長するのであり、彼らも歴史から、扇動や非寛容がいかに容易に人間を非人間に変えるかを学ばねばならないのです。」(下巻 pp.201-202)

50年の間に起きたことへ言及しながら、50年前に不完全だった部分を補い、再度未来への希望を書き記して筆をおいている。

私とこの本の関わりは、
渡辺一夫の著書でヒューマニズムの考え方に興味をもつ
→ 彼の著書を正しく読むために仏文学史の勉強を始める
→ 世界史を知りたいとこの本を読み始める
→下巻で啓蒙主義の前後の文脈を知る(キーワードの「寛容」が出てくる)
→ 本編を読み終える
という流れだったので、あとがきにヒューマニズムの話が出てきて不意をつかれた。全体におけるここ、を知るいい機会になった。

次はもう少し仏文学史、そのあと啓蒙主義の時代に向かう予定。

下巻目次

25 新しい都市と市民の誕生(Cities and Citizens)
26 新しい時代(A New Age)
27 新しい世界(A New World)
28 新しい信仰(A New Faith)
29 戦う教会(The Church at War)
30 おぞましい時代(Terrible Times)
31 不幸な王としあわせな王(An Unlucky King and a Lucky King)
32 その間に東欧で起こったこと(Meanwhile, Looking Eastwards…)
33 ほんとうの新しい時代(A Truly New Age)
34 暴力による革命(A Very Violent Revolution)
35 最後の征服者(The Last Conqueror)
36 人間と機械(Men and Machines)
37 海の向こう(Across the Seas)
38 ヨーロッパに生まれたふたつの国(Two New States in Europe)
39 世界の分配(Dividing Up the World)

五〇年後のあとがきーーその間に私が体験したこと(The Small Part of the History of the World Which I Have Lived Through Myself: Looking Back)

 

 

 

2018-10-20