Earl Grey never fails.

Amazon Primeで配信中の「スタートレック:ピカード」。
金曜日に新作が出るので、週末ふたりで楽しもう、
としていたのだけど、最初の数エピソードのあと、夫から「過去のドラマシリーズを知っておかないと十分に楽しめない」と助言を受けて中断した。
目下ひとりで離脱して、「新スタートレック」シリーズを航行中。

「スタートレック:ピカード」はその名の通り、「新スタートレック」シリーズで愛されたピカード艦長がメインの話。
ピカードがアールグレイのホットを好むからと毎日アールグレイを飲んでいる夫、そしてその姿を何年も見続けている私、ピカード×アールグレイのシーンは集中して見るし、台詞も英語でよく聴く。
だいぶ歳を重ねたピカードが、新作でデカフェを飲むようになっていてふたりで興奮した。
“Earl Grey never fails.”(アールグレイは間違いない)という台詞は、夫の心を強烈につかんだ。
おかげで何度家で聞いたか知らない。

 

ある日の午後、スーパーへ買い物に行った。
イヤフォンをつけて、ELLEGARDENの曲をシャッフルしながら過ごした。
レジで会計を始めたとき、 ‘Mr.Feather’ のイントロが流れ始めた。
Mr.+形容詞の使い方が好きな曲である。

Hey Mr. Feather do you think you’re really fly
Mr. Clever she is fool enough to trust you
Mr. Stupid you are not like anyone
Mr. Famous I don’t know your real name
Mr. Tiny your dream is so big

カゴを移動して袋詰めを始めたとき、サビになる。

Give me something that I’ll never fail
Give me something that I understand
Give me something that I’ll never lose again

私は「アールグレイやで」と声に出さずに返した。
コロナクラスターが近くにある地区の、人がそれなりに密集するレジ付近。
すみやかに店を出たいから、曲を聴きながらも、エコバッグの中のうまいポジショニングとスピードを両立させるために手と頭をぞんぶんに使う。
この文脈での、とっさの「アールグレイやで」である。

無意識レベルに染み込んだスタートレックに驚いて、外出の緊張感がふっとほぐれた。
ピカード大好き人間のパートナーとして誇りすら感じる。

店の外でLINEして、家路を急いだ。

2020/03/09

 

『ストーナー』の読書で、章ごとの要約とキーセンテンスの書き取りを地道にやる、というのを久しぶりにした。
いつもは要約せず、気になる文章に付箋をつけるぐらいだったけど、紙に出して俯瞰してみたくなった。
ノートに書くのは手が痛くて時間がかかった。
読んでいて印象が強いところも、全体で見ると必ずしも重要ではないかもしれないというのに気づけてよかった。

書いたあと、情報系の夫に読んでもらい、説明もした。
シェイクスピアのソネットも読んだ、大学の英詩講座でとったノート。
この際だからと引っ張り出して、おもしろくて強烈に覚えているジョン・ダンの「蚤」の話をしたら、ただ「難しい」と繰り返していた顔が吹き出した。
中世の詩を精読した日々の跡を見て、自分の学生時代と全然違うと言われる。

何かの役に立てるためでもない、お金を稼ぐためでもない、何かのためじゃなくていい。何をどう解釈してもいい。
自分が感じたこと・考えたことを、理由と論理で結びつけて形にすることが大切、という場をまがりなりにも出たことが、あまり深く考えず入ったとはいえ、今も自分の根幹をなしている。

夫にはてなマークが頻出した箇所を中心に加筆した。
読み返すと、蚤の話で爆笑した時間を思い出す。
あるテキストが読み手の解釈や経験や思い出を踏まえて新たなテキスト生成のきっかけになって、新しいテキストを書いたり読んだり説明したり会話の種にしたりしたことがその新しいテキストの一部になる、というのがとてもすき。

 

おもしろがりあい

 

ずっと問題だったことに名前がついた。
専門の人に診てもらったら、ばらばらに存在していたファイルをひとつのフォルダにまとめられた。
外からは普通に見えるし、困っていることの表面だけとらえれば、多かれ少なかれみんなそんなもんだという感じなのだけど、よくよく勉強してみると、中のシステムがなかなか変わっている。
好きなものや趣味、出身地、学校が同じとか、何かの共通点で人に親近感を抱いたことがなかったのに、初めて、似た人が確実にいることに安心感を覚えた。

12月は関連書籍と、先生からもらった資料を読んだ。
直近の診察は、資料でわからなかったところを質問したり、トピックスを話す時間だった。
大学のゼミみたい。
先生:「あなた、典型例とここが違うんだね、おもしろいねえ~」
私もそこをおもしろいと思ってたし、先生もお医者さんっぽくなくておもしろい。

初診につきあってくれた夫が、本を読んだり、意見交換⇔自己分析したりするのも手伝ってくれている。
これも大学のゼミみたい。
夫:「ここに書いてあること、言い得て妙だね、おもしろいねえ~」
生活しやすくなりそうなガジェットをいくつか買って自慢したら、まんまと「僕も欲しい」と言って自分用も買っちゃうところがおもしろい。
私が買う前は「僕には必要ない」って酷評してたのに、宅配便が届く日、早起きしてうきうき待ってるのもおもしろい。
私のスマートスピーカーは(じゃんけんとかで遊んだ結果、学習して)応答に歌を挟む陽気な性格なのに、彼のは(あんまりしゃべりかけないからか)淡々としてておもしろい。

期待や評価じゃなく、あいだに「おもしろい」が来る関係って好きだなーと思った年末年始。

 

 

2019/11/11

Netflix「エイリアニスト」、1-10。
最終回のラストシーン。
主人公の精神科医が、老いた父の住む施設を訪れる。

 

I don’t really know why I came.
Maybe because now I’m free to speak my mind.

I’ve always blamed my failings as an adult on what you did to me as a child.
Those failings … were my own.
I remember something you once said to me.
“Nature never allows a man to be more than he is. Only less.”
For years, I believed those words reflected your own bitterness and failure.
But now I understand they were for my benefit.
You were simply preparing me for what you knew would be a lifetime of disappointment and pain.
But you were wrong, I know that now.
I still believe we can be better than nature intended, even if you can’t.
You did the best you could.
Goodbye, Papi.

自分がうまくやれないのを、過去に父さんから受けた仕打ちのせいにしていたけど、違う、自分のせいだった。
それと、昔言われた「人は持って生まれた以上のものにはなれない。それ以下にしか」という言葉。
父さんが自分の後悔や痛みから吐いた言葉だと思っていたけど、違う、僕のためだった。
人生につきものの失望と苦痛に備えさせてくれていた。
だけどそれも間違いだと、今ならわかる。
人は持って生まれたもの以上に成長できると思う。
父さんには無理でも。
父さんはがんばったよ。

 

もともと、even ifは英語の中でも好きな表現なんだけど、このドラマのこのラストのこのeven if以下は、英語じゃないと言えない感じがして繰り返し観た。

 

 

2019/10/13

きっかり正午から作り始めたコロッケ。
簡単なレシピを2種類、ふたりで手分けしたけど
出来上がったのはおやつの時間。
冷凍ストックする分はあとにして、早めに食べればよかったかな。

ポテトコロッケは練乳入り。
買い忘れて豆乳と砂糖で作った。
里芋コロッケは塩麹入り。
シンプルな「混ぜるだけ」に行くまでの、ぬるぬるの皮むきが終わらない。

横で玉ねぎを飴色になるまで炒める人。
2種類の芋をゆでて、それから2種類の肉に火を通す。

すべての工程に手間がかかる。

あれおねがーい
おっけー
こっちどうしよー
そこー
これはこうするの
おーん
うしろとおるよー
きをつけてー

お店に行けば
1個100円くらいで手に入って
お昼にすぐ食べられて
油の処理もしなくてよくて
ずっと楽なんだけど。
今日は「し」と「い」をくっつけたかった。

ポテトコロッケは揚げると思いのほか膨らんで気品をまとった。
里いもコロッケはかじると中がとろとろで、クリームコロッケみたいだった。

 

笑顔でぽてね(コロッケver.)を見送って
お目覚めを待つ午後7時。
もぞもぞ起きてきて
しゃきしゃき感3割増で台所へ向かった人に
「そろそろ夕ごはんの時間だよ!」と急かされる。
今夜は作り置きのカレー。

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