Don’t Go Back to School: A Handbook for Learning Anything

Date
8月, 24, 2018

著者:Kio Stark
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アートの仕事をしたい、ジャーナリストになりたい、最新の科学技術の研究をしたいと思ったら、どうするか。大学に行こう、大学院に行かなきゃ、と思う。でもな、お金高いんだよな、今の仕事どうしよう、と考え始める。難しそうなら諦める? 学位がないと採用してもらえないだろうし。

2012年、クラウドファンディング Kickstarter で1,588人の協力を得て実現した本である(本の後ろ10%には Funders として名前が記載されている)。著者はたぶん、好奇心旺盛で、パワフルな女性だ。自分の経験をふまえながら、プロジェクトを先導し、熱をこめて語る。弁護士や医療従事者など、決まりとして学位が必要な職業を除いては、学位なんてなくても自分で学んでどうにかできる、大学で研究したい、教授を目指したいのでなければ学位に大金を払わなくていいよ=学校に戻らなくていいよ、と言う。

彼女は独学者を Independent Learner と呼び、既存の教育インフラの解体を試みる。本の4分の1で独学の考えかた、おさえるべきポイント、多岐にわたる手段について説明する。今の時代、自分で学ぶとなると、MOOCs(大規模公開オンライン講義)の Future Learn や Udacity、日本だと JMOOC や Schoo をイメージするが、彼女曰く、MOOCs は通常の学校教育の枠組みをオンラインに移設しただけで、惜しいとのこと。もっと独学者が学びあうような場が理想的とし、オンラインでもオフラインでも、コミュニティを探して入るよう説いている。「独学」はリソースを活用して自分から学ぶということであって、ひとりで完結する活動ではない。

そして本の大半は、Independent Learners へのインタビューが占める。職業は、テクノロジージャーナリスト、原子力の専門家、人口統計の分析家、ジャーナリスト兼プログラマー、哲学者兼ポッドキャスト配信者、デザインコンサルタント、公衆衛生専門家、ドキュメンタリーディレクター、小説家兼映画監督、イラストレーター、俳優、彫刻家、写真家、起業家、ロボット研究家兼イベントプランナー、ソフトウェアエンジニア、投資家、プロダクトマネージャー、計算生物学者、ブロガー兼小説家など。多様な学び、仕事づくりのお手本だ。

とてもいい本なので、多くの人が読めるよう、翻訳されるといいとは思う。ただ、紹介されるリソースも英語なので、実現が難しいのもわかる。結局はある程度英語を読むことができて、英語で学べる人向け。もったいないなあ(翻訳されていないから、グーグルやSNSで調べても日本語で書かれた情報が出てこない。翻訳があるのとないのではこんなに情報量が違うのかと驚いた)。