自分のなかに歴史をよむ

Date
12月, 03, 2018

著者:阿部謹也
出版社:筑摩書房
発行日:2007年9月10日
形態:文庫

 

歴史研究に入るきっかけと、そのあとの経過についての本。著者は『世間とは何か』など、社会史の大家。アベキン。

久しぶりに『世間とは何か』を読みたくなって、本棚で見つけられなくてAmazonまで行ったのに、「いや、まだ本棚のどこかにあるはずだ」と思うと買えなくて、「じゃあ」と代わりに買った本。

恩師の上原専禄の言葉、「それでいったい何が解ったことになるのですか」と「解るということはそれによって自分が変わるということでしょう」を受け、何を問いの答えとするかについて考え続けた人。問題についての問題、問題の立脚点。

「ヨーロッパの何がどのように明らかになったときに、私たちはヨーロッパを理解したことになるのかという問いです。その問題をドイツ騎士修道会に即して問うてみますと、制度としてこの組織が生まれたとか、どのような歴史的条件の下で成立し、どのような活動をし、どのように変貌していったかが明らかになったとしても、私たちは何も解ったことにはならないということになります。その程度のことなら、すでにドイツ語や英語の本があって、それをよみさえすれば知ることはできるのです。」

「では、いったいドイツ騎士修道会の何が明らかになったときに、ドイツ騎士修道会が解ったことになるのか、この問題が私にとっては最大の問題で、大学を卒業して大学院にはいってのちも、この問題をいつも考えていました。」(p.45)

最近の私に置きかえると、「作品の何がどのように明らかになったときに、私は作品を理解したことになるのか」かな。当たり前だけどすぐにどうこう言えない。ずっと考え続けて、答えを得て、研究に昇華させたのはほんとうにすごい。