家庭の医学

Date
5月, 16, 2019

著者:レベッカ・ブラウン
訳者:柴田元幸
出版社:朝日新聞社
発行日:2006年3月30日
形態:文庫

Excerpts from a Family Medical Dictionary
by Rebecca Brown
2001

 

再読。母に癌を認めてから見送るまでのノンフィクション。各章が病に関する語と定義から始まる、事典のようなつくり。たとえば「貧血」「薄暮睡眠」「転移」など。最後は「火葬」。

広く使われているものとしての単語が先にある。一家の経験が説明を加えていく。何を繰り返すことができるか。何を繰り返せなくなったか、すっかり忘れてしまったか。何が一般的な事例と同じで、異なるか。何が残るか。

目次に並んだ言葉を、私はまだよく知らない。自分や周りの人が病にかかってようやく、身を切られて、体に詰め込まれ、全身を巡る言葉になるんだろうと思う。単語テストがあるなら、0点を取り続けたい。

 

訳者によるあとがきの、このエピソードが好きだ。

本書はアメリカでは、2001年にグレイ・スパイダー・プレスから大変美しい限定版で出版され、普及版は2003年にウィスコンシン大学出版局から刊行された。限定版で出したのは、紙やインクから手作りして本を作るグレイ・スパイダーの精神がこの本の内容に相応しいと思ったから、と2001年に初来日した際に作者は言っていた。

 

グレイ・スパイダー・プレスのスターン&フェイ夫妻のウェブサイト。夫のスターン氏は残念ながら2006年に癌で死去していて、残った家族で切り盛りしているらしい。
http://www.sternandfaye.com/about.html

レベッカ・ブラウンのページには、本をどう作ったかが載っている。ボドニはフォントの名前。夫婦で手組みした活字が残ってるってすごいな。
http://www.sternandfaye.com/g_bExcerptsD.html#

Letterpress printed on Mohawk superfine paper with text set in Bodoni 375. Chapter titles are printed in handset 36 point Bodoni 175 in red. The deluxe edition was hand bound in an Italian black & white linen tweed cloth over boards with an inset front title label. The deluxe edition also includes a tipped in three-tone monochromatic woodblock frontispiece. The deluxe edition is numbered & signed by the author.