という、はなし

Date
10月, 19, 2020

 

著者:吉田篤弘、フジモトマサル
出版社:筑摩書房
発行日:2016年12月10日
形態:文庫

 

「読書の情景」をテーマにした連載の文庫化。
通例であれば先に文章、あとからイラストの流れをとるところ、逆に進めたとのこと。
動物が様々なシチュエーションで本に向かうイラストに、短い物語がついている。

 

冒頭から引きつけられたもの:

p.30 「待ち時間」
このあいだ、新聞の死亡記事欄をぼんやり眺めていたら、「待ち時間」とあった。そういえば、このごろ、とんとお見かけしなくなっていた。昔は「待ち時間」が街のあちらこちらに見つけられ、銀座・三越のライオン像や、渋谷のハチ公像のあたりなど、「待ち時間」がひしめきあって息苦しくなるくらいだった。
死因は、携帯電話による「情報過多死」。

 

p.22 「灯台にて」
午後、行きつけの灯台へ。
灯台へ来たら、少し空など見て、やはり海も見て、少し本を読んで、おにぎりを食べ、それからまた本を読む。
読むのに飽きたら、少し考える。

 

p.50 「かならず」
『幸福になる』という本を買った。
いや、ことし七十になる母に頼まれて買いにきたんです、七十にもなって「幸福になる」も何もないんですが―という顔をしてレジで代金を払った。
帯の謳い文句に惹かれたのである。
「かならず」と控えめにその四文字のみ。

 

「読者への回復」、「背中合わせ」、「暗転」は終わり方が好き。
こういう、くすっと笑えるような、かつ引き締まった文章に憧れる。

 

読書好きな人に贈りたくなった。