バレットジャーナル 人生を変えるノート術

Date
8月, 19, 2019

著者:ライダー・キャロル
訳者:栗木さつき
出版社:ダイヤモンド社
発行日:2019年4月17日
形態:単行本

THE BULLET JOURNAL METHOD
by Ryder Carroll
2018

 

バレットジャーナル開発者による公式本。学習障害とうまくやっていくため、試行錯誤の末、自分のために編み出した思考システム・ノート術。「いつも何をノートに書いてるの?」と同僚に訊かれ、こっそり教えると、「大勢にシェアしたほうがいい」とアドバイスされ、ウェブサイトをつくり、コミュニティをつくり、メンバーと共に改善を加えてきた経緯がある。核になる考え方はシンプルで、ウェブサイトにも載せているから、当初の本人としてはそれで十分だと思っていたんだろうか。世界的に認知されても、公式本は長らく出ていなかった。

仕事のマルチタスクがGTDという手法で解決して以来、管理手法マニアだった私は、たぶんだいぶ初期から知っていた。日本語の情報がないと流行らないもんだなと様子を見ていたら、何年かしてアーリーアダプターの方がガイド本を出版した。そこから少しずつ日本でも知られ始めた。

バレットジャーナルの考え方は、禅やミニマリズムの影響も大きく、徹底的にシンプル。基本は、必要なものだけ。To doリストをつくるとき、「(チェックボックス)」を書くのが一般的だけど、著者は「・」を使う。そのほうが簡単に書け、汎用性があるから。ひとつひとつに意図がある。非公式のガイドブックやウェブの検索結果だと、「ノートを自由に使える点」に重きがおかれていて、もともと流行っていたほぼ日手帳や女子的ノート術との親和性もあり、文字や色の装飾性が高いサンプルが多く出てくる。公式本が重要なのは、そういった装飾性がイコールバレットジャーナルではないと断言しているところだ。

装飾が楽しくて、あったほうが自分の人生がうまくいくというのなら選択すればいいが、バレットジャーナルだからといって、装飾しなければいけないのではない。バレットジャーナルを始めるにも、続けるにも、このキャッチーな装飾性にマイナスの影響を受ける人が多かったのだろう。著者は繰り返し、バレットジャーナルの本質を説く。自分の目的をもつこと、その達成の「ために」ミニマムで十分なシステムを使うこと。よりよいものにするため、自問と改善を続けること。不要なものを常に取り除くこと。

核の思想があり、細部にも意図があり、人の多様性を受け入れる柔軟性もある。美しくて強靭なシステムだと思う。絵よりも言葉が好き、自分で考えるのが好き、ミニマリズムが好きという人にはうまくインストールされそう。

 

参考:

出版記念で来日したときのインタビュー記事2種。イベント、私も行きたかった……。

【令和でも注目!】バレットジャーナル発案者 ライダー・キャロル氏にインタビュー
https://www.buntobi.com/articles/entry/stationery/009403/

バレットジャーナルのメソッドは、最初に紹介したときは、システムの部分を強調したので、生産性を高めるためのツールのように見えますが、そこに価値が置かれ過ぎているように感じています。
何故なら、間違った目的に向かって生産性高く進んでいくこともあるからです。バレットジャーナルは、本当に自分が関心があることにたどり着くためのものだと思っています。
実は、人は自分自身のことはよく分かっていません。何故なら、他のことに気を取られてしまうからです。そのように理解するようになりました。そこで、この本が役に立つと思っています。
まず、バレットジャーナルのシステムを使って、自分の行動を明確にすること。そして、メソッドを使って自分の信条が明らかになる。バレットジャーナルは、自分の行動と信条が一つの線でつながることができるのを手助けしてくれるメソッドです。それによって思考性や意志力を持った生き方に通じることができます。

 

バレットジャーナルの発案者、ライダー・キャロルに訊く、思考を整理するノート術が誕生した理由
https://shop.delfonics.com/feature/rydercarroll/

私が何年も何年も、長い時間をかけて集積した問題解決の方法が凝縮されたものがバレットジャーナルです。自分の行動と信条が1本の線でつながっていく手助けをするためのメソッドなのです。この本には、思想と実践の両方が書かれています。まだバレットジャーナルを始めていない方のきっかけにもなると思います。実践することで、自分が目指す道を意志力を持って選び、進むことができるでしょう。なぜなら、失敗が非常に多く、うまくいかないことが多かった私が、時間をかけて試行錯誤を繰り返した「確かなメソッド」なのですから。