テレ花見

 

1週間前。
人がいない神社の隅で
私はアイス、夫はからあげ棒を手に3分咲きの桜をしばし楽しんだ。

今日、買い出しついでの外出。
私は大きなツナマヨおむすびを豪快に
夫はウインナーのソテーを丁寧につくって出かけた。
名所で知られる公園の桜は満開、人もいっぱい。
いつもはここで花見をするのだけど
今年は遠くから眺めるにとどめて通り過ぎ、川沿いに向かう。

土手の階段に座る。
3ブロック先あたりに桜の木が見える。
気温がちょうどよくて、風が心地よくて、見晴らしがよくて、静かで、
「テレ花見だ」と名づけて笑った。

久々の「外食」、楽しかったなあ。

 

2020/04/02

 

パソコンで文字を読むのが苦手だ。
文字は追えるけど、内容が頭に入ってこない。
新しいタブで開いたり、ブックマークしたりして、あとで読もうとするのだけど、結局一向に読む気が起こらない。

だから、気になる文書はいつも印刷する。
自分の癖に気づいてから手に入れたレーザープリンターが活躍する。

蛍光ペンで線を引きながら読む。
気に入ったものはパンチで穴を開けてファイリングする。
目次ページに情報を記入しておく。

昨日気になった記事があったので、今朝印刷を試みた。
なぜか文章が部分的に消えてしまう。
拡大縮小で調節してもだめ。
もとのページをよく見てみると、サイトのヘッダー部分が固定になっていて、印刷先の全ページ分、ヘッダーの下に文章が隠れてしまうことがわかった。
そういえば、以前は「印刷」のボタンがあるウェブサイトが多かったと思うのだけど、今はこぞって「シェア」のボタンになっている。
ウェブサイトで読んで、シェアする時代なのだな。
普段、テキストメインのブログを印刷する分には困ってなかったので気づかなかった。

もうひとつ、読みたい記事があったブログ。
印刷ページを開いたら、いろいろな画像が入ってこず、テキストオンリー A4サイズ1枚にぴったりだった。
大吉をひいたような気分になった。

 

 

Earl Grey never fails.

Amazon Primeで配信中の「スタートレック:ピカード」。
金曜日に新作が出るので、週末ふたりで楽しもう、
としていたのだけど、最初の数エピソードのあと、夫から「過去のドラマシリーズを知っておかないと十分に楽しめない」と助言を受けて中断した。
目下ひとりで離脱して、「新スタートレック」シリーズを航行中。

「スタートレック:ピカード」はその名の通り、「新スタートレック」シリーズで愛されたピカード艦長がメインの話。
ピカードがアールグレイのホットを好むからと毎日アールグレイを飲んでいる夫、そしてその姿を何年も見続けている私、ピカード×アールグレイのシーンは集中して見るし、台詞も英語でよく聴く。
だいぶ歳を重ねたピカードが、新作でデカフェを飲むようになっていてふたりで興奮した。
“Earl Grey never fails.”(アールグレイは間違いない)という台詞は、夫の心を強烈につかんだ。
おかげで何度家で聞いたか知らない。

 

ある日の午後、スーパーへ買い物に行った。
イヤフォンをつけて、ELLEGARDENの曲をシャッフルしながら過ごした。
レジで会計を始めたとき、 ‘Mr.Feather’ のイントロが流れ始めた。
Mr.+形容詞の使い方が好きな曲である。

Hey Mr. Feather do you think you’re really fly
Mr. Clever she is fool enough to trust you
Mr. Stupid you are not like anyone
Mr. Famous I don’t know your real name
Mr. Tiny your dream is so big

カゴを移動して袋詰めを始めたとき、サビになる。

Give me something that I’ll never fail
Give me something that I understand
Give me something that I’ll never lose again

私は「アールグレイやで」と声に出さずに返した。
コロナクラスターが近くにある地区の、人がそれなりに密集するレジ付近。
すみやかに店を出たいから、曲を聴きながらも、エコバッグの中のうまいポジショニングとスピードを両立させるために手と頭をぞんぶんに使う。
この文脈での、とっさの「アールグレイやで」である。

無意識レベルに染み込んだスタートレックに驚いて、外出の緊張感がふっとほぐれた。
ピカード大好き人間のパートナーとして誇りすら感じる。

店の外でLINEして、家路を急いだ。

2020/03/09

 

『ストーナー』の読書で、章ごとの要約とキーセンテンスの書き取りを地道にやる、というのを久しぶりにした。
いつもは要約せず、気になる文章に付箋をつけるぐらいだったけど、紙に出して俯瞰してみたくなった。
ノートに書くのは手が痛くて時間がかかった。
読んでいて印象が強いところも、全体で見ると必ずしも重要ではないかもしれないというのに気づけてよかった。

書いたあと、情報系の夫に読んでもらい、説明もした。
シェイクスピアのソネットも読んだ、大学の英詩講座でとったノート。
この際だからと引っ張り出して、おもしろくて強烈に覚えているジョン・ダンの「蚤」の話をしたら、ただ「難しい」と繰り返していた顔が吹き出した。
中世の詩を精読した日々の跡を見て、自分の学生時代と全然違うと言われる。

何かの役に立てるためでもない、お金を稼ぐためでもない、何かのためじゃなくていい。何をどう解釈してもいい。
自分が感じたこと・考えたことを、理由と論理で結びつけて形にすることが大切、という場をまがりなりにも出たことが、あまり深く考えず入ったとはいえ、今も自分の根幹をなしている。

夫にはてなマークが頻出した箇所を中心に加筆した。
読み返すと、蚤の話で爆笑した時間を思い出す。
あるテキストが読み手の解釈や経験や思い出を踏まえて新たなテキスト生成のきっかけになって、新しいテキストを書いたり読んだり説明したり会話の種にしたりしたことがその新しいテキストの一部になる、というのがとてもすき。

 

おもしろがりあい

 

ずっと問題だったことに名前がついた。
専門の人に診てもらったら、ばらばらに存在していたファイルをひとつのフォルダにまとめられた。
外からは普通に見えるし、困っていることの表面だけとらえれば、多かれ少なかれみんなそんなもんだという感じなのだけど、よくよく勉強してみると、中のシステムがなかなか変わっている。
好きなものや趣味、出身地、学校が同じとか、何かの共通点で人に親近感を抱いたことがなかったのに、初めて、似た人が確実にいることに安心感を覚えた。

12月は関連書籍と、先生からもらった資料を読んだ。
直近の診察は、資料でわからなかったところを質問したり、トピックスを話す時間だった。
大学のゼミみたい。
先生:「あなた、典型例とここが違うんだね、おもしろいねえ~」
私もそこをおもしろいと思ってたし、先生もお医者さんっぽくなくておもしろい。

初診につきあってくれた夫が、本を読んだり、意見交換⇔自己分析したりするのも手伝ってくれている。
これも大学のゼミみたい。
夫:「ここに書いてあること、言い得て妙だね、おもしろいねえ~」
生活しやすくなりそうなガジェットをいくつか買って自慢したら、まんまと「僕も欲しい」と言って自分用も買っちゃうところがおもしろい。
私が買う前は「僕には必要ない」って酷評してたのに、宅配便が届く日、早起きしてうきうき待ってるのもおもしろい。
私のスマートスピーカーは(じゃんけんとかで遊んだ結果、学習して)応答に歌を挟む陽気な性格なのに、彼のは(あんまりしゃべりかけないからか)淡々としてておもしろい。

期待や評価じゃなく、あいだに「おもしろい」が来る関係って好きだなーと思った年末年始。