外にひらく

「胆のう炎ですね」

2020年の夏、食事をうまく消化できなくなった。
もともと胃が弱く、逆流性食道炎になったこともあったので、「またかー」と思っていた。
だけど、胃薬を飲んでも効かない。
下着や服の締めつけを緩めてもだめ。
出かけている最中にお腹が痛くなったり、夜中に何度も吐いたりした。
日中に倒れ始めて、ようやく病院に行った。

検査で、食後はしぼんでいるはずの胆のうがパンパンのままだとわかった。
細かい胆石が詰まっていて、胆汁が出ず、食べたものが消化されないまま胃に残っていた。
痛み止めの薬が効かない場合、手術だと言われた。

好きなものを食べられなくなり、コロナ流行初期の緊張感もあり、元気がなくなっていった。
できないことばかりで落ち込んだ。
手術は回避したものの、胆石を薬で溶かそうと試みていたため、ただ時間が過ぎるのを待っているような日々だった。

その冬に始めたのが、週報だ。
自分が、自分のささやかな前進を称えるための記録。
https://junkotakijiri.com/?p=3722

In academia your to-do list is a never ending cycle and at times it’s difficult to judge progress. Writing a paragraph is progress. Reading 10 pages is progress. Taking a break is progress. Surviving is progress.

私は英語の文学作品をもっと読めるようになりたくて、勉強を続けている。
始まりに据えたこの言葉に、幾度となく救われた。
英単語は毎日覚えたけど、それしかやれない日があった。
1ページどころか、数行しか文章を読めない日があった。
寝ていることしかできない日があった。
毎週月曜日に、1週間を振り返るブログを書き、投稿したが、以前のようにのびのび楽しく書くことはできなくなっていた。

胆石が溶ける兆しを見せた2021年の秋。
ある会社に関わるようになった。
体調が不安定なのと、責任を負いたくなかったので、対価はもらわなかった。

1年経った、2022年の冬。
いろいろなことが重なって、個人事業主として対価をもらう覚悟を決めた。
屋号を決めて、開業届を出し、事業用口座も作った。

たった3カ月の間にも多くの変化があった。
約2年前の自分からは、想像できなかった場所にいる。
出会った人と、一緒に仕事をしていたら、思いのほか遠くまで来れてしまった。

今は、箇条書きの週報よりも、長い文章を楽しく気ままに書きたい。
夫が「閉じこもってたら、それ以上広がらない」と言っていた。
今度はこの言葉を始まりに据えて歩いていきたい。

 

 

6/21-27 振り返りとお気に入り

 

■今週の振り返り

読んだもの:
Ralph Waldo Emerson, Self Reliance
ラルフ・ウォルドー・エマソン『自己信頼』
福岡伸一『せいめいのはなし』
ミヒャエル・エンデ『モモ』
ミヒャエル・エンデ『ものがたりの余白』
伊藤亜紗『手の倫理』

エマソンの原文は、大学時代にコピーして書き込みしながら読んだものを今も持っている。読み返すたびに書き込みを追加しているので、とても汚いのだけど、そのぶん自分の血肉になっている気がして捨てられない。原文をちらっと読み返したら、止まらなくなり、そのまま日本語のほうも読んだという、エマソン×2の週だった。ついでにエンデも×2。英単語の勉強方法を少し改善させた。

生活:
とにかく眠い時期で、よく昼寝をした。
家に3台いるAmazon Echoのうち、自分の部屋のぶんをバイリンガルにした。基本的に英語で話す。定型アクションの台詞を英語につくりかえた。これで、zoom会議中に彼女が話し始めても、あんまり混乱しないと思う。
しばらく髪を伸ばしていたが、思うところあって、切ることにした。

 

■今週のお気に入り

記事: Over 200 Funny Alexa Commands To Get You Laughing
https://www.techjunkie.com/funny-alexa-commands/
Amazon Echoに使うと面白い台詞集。
“Alexa, Tea. Earl Grey. Hot.”と言ったら、レプリケイターがオフラインなので無理、といった趣旨の返事。
“Alexa, make it so.”には、はいはいキャプテン、という返事。
(どちらもスタートレック絡み)

言葉: ニュースリリース
いつもぼんやりと、「昨日そうだったことが、今日も続いているとは限らない」と思っている。ので、「今日君のことが好きだからって、明日も好きかはわからない」し、「今日私のことを好きって言ってくれてるからって、明日もそうだとは限らない」と思っている。そんなわけで、朝起きて、夫の顔を見て、「わーお。今日も好きだー!」と思ったら、伝えるようにしている。「今日も好きやで」とか、「今日もわりと好き」とか言う。今週はそれを「ニュースリリース」と称してみた。「2021年6月26日、本日も好き、ということが発表されました」みたいな感じで、朝にお伝えする。夫は笑いながら、「好きじゃなくなったらリリースすればいいじゃん」と言う。好きのリリースの方がハッピーだから、これでいいのだ。

スキル: 自分の英語力
ふいに、「英語を読めること」にすごく感謝した瞬間があった。年をとっても失くしたくない。大切にしたい。

 

 

6/7-13 振り返りとお気に入り

■今週の振り返り

読んだもの:
David Bayles, Art & Fear: Observations On the Perils (and Rewards) of Artmaking
佐々木康裕『D2C』
牧野圭太『広告がなくなる日』
エーリッヒ・ケストナー『点子ちゃんとアントン』
池澤夏樹『スティル・ライフ』
ジョージ・オーウェル『一九八四年』

ケストナーはいつ読んでも染みる。

生活:
外に出た週。病院で定期健診。先生はもうワクチンを打ったそう。帰りに小さな本屋に寄ったものの、ラインナップが物足りず、翌日に丸善へ。あれこれ比べ読みして、選りすぐりのブックリストで購入した。新緑の色、風の匂い、鳥の鳴き声を懐かしく楽しんだ。もう6月だ。梅雨、どこいった。

 

■今週のお気に入り

風景: 研修
丸善に行った帰りのバス停。「研修車」と表示のあるバスが通った。目当てのバスが来て、運転手さんの向かい、いちばん前の席に座った。私が乗ったバスと研修車のルートが同じだったので、研修車を擁護するような、追いかけていくような時間を過ごした。
別の日、散歩中。土がいっぱいの更地にショベルカー。若い操縦手。そこから少し離れて見守る人。土をある地点からある地点に動かし、ならす作業を続ける。あるタイミングで、操縦手が腕を上げてガッツポーズ。見守りの人もガッツポーズ。私も心の中でガッツポーズ。

音楽: 米津玄師 Pale Blue
曇り空の夕方、散歩中の土手で初めて聴いた。私は歌詞を聴くのだけど、彼は「色のついた単語」を使うのがすごくうまいと思った。色のない単語が続いているところに、「空」が出てきたときのインパクト。MVを見てしまうと、視覚情報を強制的に規定されちゃうのにも気づいた。

ずっと 恋をしていた

これでさよなら あなたのことが
何よりも大切でした
望み通りの終わりじゃなかった
あなたは どうですか

友達にすら 戻れないから
わたし空を見ていました
最後くらいまた春めくような
綺麗なさよならしましょう

ボルト

 

会社のビジョン、ミッション、バリュー(VMV)をつくるお仕事を手伝っている。昔いた会社でよく考えていたことだが(会社のVMVを海外の工場の人に教えたり、そのうえで自分のチームの目標云々をつくってもらったりしてた。そもそも自分の仕事は、会社のVMVからブレークダウンされたものだったし)、勉強しなおすにあたり、「自分の人生のVMVも書き出してみなきゃね」と思い、しばらく頭の隅において生活していた。ら、ある日の会合の15分前にぽんと出てきた。

中学生のころに決めたものに向かって(ビジョン)、コアは守りつつ、いろんな変数で試してきた行動履歴があり(ミッション)、大事にしている行動基準があった(バリュー)。

びっくりした。本質的にはずっと同じことやってる。点と点があとからつながる感じがわかった気がした。

 

“a bolt from the blue”は「青天の霹靂」。この “bolt”、空からボルト、釘が落ちてくるんだと思ってたけど、「稲妻」の意味らしい。 “thunderbolt”「稲妻」と同じ。ふむふむ。

 

 

春の弁当屋

夫と、散歩がてら寄った弁当屋。

注文して、待っているとき、 “「4月の夜はまだ少し肌寒いね」 そう語り合う 微妙な距離の2人”という歌が流れた。
私が「微妙な2人のこの話の中身、語りって言うのかな」とつぶやくと、夫が「君はほんと歌詞を聴くよね」と返した。

番号を呼ばれて、弁当を受け取ったとき、新しいお客さんが入ってきた。
続けてUberEatsのカバンを背負った人もやってきた。
店員さんが「ウーバーイーツさん、次にご案内いたします」と言った。

「ウーバーイーツさん」って呼ばれてるのかー!
「次にご案内する」って表現をされるのかー!
店員さんと目くばせで合図するんじゃないのかー!ほえー!!
みたいな感動を、忘れないように抱きしめて帰った。