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手芸

無印の絵本ノートでつくる旅のしおり

旅のしおり、型紙の覚え書き。無印の絵本ノート向け、カバーと印刷アイデア。

 

9月の終わり、大阪へ観劇に出かけることになった。久しぶりに観光もしようと、夫から「旅のしおり」作成を依頼された。

昔は、印刷した紙を折ってホッチキス止めする、修学旅行で使うようなしおりをつくっていた。ルーズリーフに貼ってリボンでまとめたり、じゃばらに折るタイプに凝ったりもした。

新卒でメーカーに入った私たちは、家のことも仕事のように、企画から製造までをプロジェクト化して遊ぶのが好きだ。旅のしおりに関しても、何度かつくったのち、旅行の一連の動線を見直し、問題点を洗い出し、改善策を考え、仕組み化し、品質改善に取り組んだ。

 

【問題点】
・旅でガシガシ使うため、帰り着く頃にはボロボロに汚くなる。
・薄いので、旅のあとに家の中で紛失する。
・しおり!と意気込んでも、実はスケジュールと持ち物以外のネタに困る。いつも同じものをつくるのは、私の気持ちが上がらない。
・ちょっとした旅の思い出アイテム、例えばチケット、レシート、プリクラ、ミニパンフレットなどを、机のそばの棚に放置してほこりをかぶせがち(なので私はわりと写真に撮って捨てるのだけど、夫は写真に撮ったうえで残しておく)。
・観光本や地図も併用するので、かばんからあれを出しこれを出しと忙しい。

【しおりに求めるポイント】
・「いつまでも大事にしておきたい感」がある。
・汚れにくく、耐久性がある。
・旅の期間もそのあとも、情報を一元化できる。
・毎回、何かしらの「新しい取り組み」を実現できる。製造のときに作り手が新しい技術にチャレンジできる、かつ、出荷後 読み手が新しい視点を得られるように、「フォーマットに乗っかる部分」と「都度新しい部分」が共存する仕組みにしておきたい。行き当たりばったりではなく、「どう考えてつくるか」をあらかじめ決めておくことで、全体的な工数削減、およびプロセス改善をおこないやすくしたい。

【タキジリ家の旅のしおりのポイント】
・無印良品の絵本ノートに、都度カバーをつくって使う。
→汚れたら洗える。カバーに旅の思い出を挟んで保存できる。かわいいので読み返したくなる、大事にしたくなる。適度な厚みで失くさない。
・旅のしおりを雑誌だと考える。
→基本的なスケジュール、持ち物リスト、地図に加え、旅のコンセプト、事前学習ページ、関連コラム、うらばなし、クイズ、広告のページを設ける。
・感想を書き込むページをつくる。
→日帰り~1泊2日であれば1ヵ所、長期であれば日ごと+総括のページを設ける。いちばん忘却しやすく、読み返していちばんおもしろいページ。

 

というわけで、以下、今回の1泊2日@大阪の旅のしおり作成フローである。

1  企画会議
2 設計
3 調達
4 製造
5 品質検査
6 出荷
7 ユーザーレビュー

 

1 企画会議
いつもピンポイントで、どちらかの「これを見よう」「あれ食べよう」から話が始まるので、大きなところからふたりで考える。旅のテーマは何か、いちばん優先したいことは何か。今回は観劇と、夫の希望で「平日の猫カフェ訪問」がメイン。日程を決めたら予算確認、役割分担。夫が宿泊や交通、チケットなどの渉外業務、私がしおりの企画・製造、持ちものを含む調達。こまめに情報共有し、随時互いの仕事に反映させる。

 

2 設計
無印の絵本ノートでつくるのは2回目。今後型紙として使いまわせるよう、今回は意識してマニュアル化。

<カバー設計工程>
A4用紙を2枚貼り合わせ、次のような折り目付きの型紙をつくる。マルマンのノート「ニーモシネ A4 方眼」を使用。一度つくっておけば、繰り返し使える。私の好みと、製図のしやすさで、ノートにぴちぴちにフィットする設計である。ゆとりが欲しい場合には27 cmの部分を+5 mm、14 cmの部分を+5 mm追加されたし。14 cm+5 mmにする場合は、3.5 cmの部分をそれぞれ3 cmにすると、A4用紙の幅(21 cm)に収まる。

単位はcm

 

<コンテンツ設計工程>
目次をつくる。ページ数は表紙・見返し各1枚、本文12枚。

P.1 表紙
P.2 旅の予定
P.3 各自の持ちものリスト
P.4-5 バス情報(発車時刻、号数、座席番号、バスターミナル地図)
P.6 ホテル地図
P.7 サルトル「出口なし」公演概要
P.8-9 会場情報(建築思想、地図)
P.10-11 ネコリパブリック情報(概要、入国手続き、料金システム)
P.12-17 たこ焼き情報×3店舗(味のポイント、歴史、地図、写真)
P.18-19 プーシキン展情報(展示概要、国立国際美術館へのアクセス)
P.20-25 予習ページ:「サルトル氏の『実存は本質に先立つ』」
P.26 偽広告(くくるの9月限定たこ焼き、「とろーりチーズもちたこ焼き」キャプチャ)
P.27 旅の感想
P.28 出版に関する情報(出版日、出版者、参照元、なんちゃってコピーライト)

 

前回は全ページを手書きにしたので、今回は印刷にした。まずパワーポイントで枠組みをつくる。あらかじめスライドのサイズを12.5 cmに設定しておく。こうすることで、スライドに画像を入れ、収まるように拡大縮小すれば、そのまま印刷してノートに貼ることができる。オフィシャルサイトの写真、スクリーンショット、地図、自分で撮った写真など。印刷で荒くならないよう、ある程度大きくて鮮明なデータを使う。

グラフィックデザインが欲しいところには、Canvaの無料素材を使用(参考資料1)。

コラムはパワーポイントのテキストボックスで作成。サルトルの戯曲、「出口なし」を観に行くので、彼の「実存主義哲学」の要点をおさえられるよう、植村光雄著『てつがくのえほん』の引用を使って紹介。

会場は、大阪駅近くのサンケイホールブリーゼ。建築思想が興味深かったので、1ページ分掲載。

出来上がったら、PDF形式で、USBなどの外部記録媒体に保存する。

 

3 調達
無印良品で「画用紙絵本ノート 小・12枚・約130×130 mm」を購入。税込290円(参考資料2)。無印会員であれば、年に数回の無印良品週間にまとめて購入することで、10%のコスト削減が可能。

布は、ペラペラ薄い綿生地。リバティ柄を数十センチ分購入。柄にもよるが、大体500円弱。厚い生地だと上述の設計図では製造不可。

糸は、布に似た色のミシン糸。シャッペスパンの#60、普通地用をひとつ。200円弱。

 

4 製造
<コンテンツ製造工程>
STEP 1 印刷
ローソンかファミリーマートにある、シャープ製のマルチコピー機を使用(セブンイレブンのゼロックス機では未検証)。外部記録媒体から、「PDFプリント」。B5用紙、2in1(2枚分の原稿を1枚に印刷)、片面印刷。カラー50円、モノクロ10円、ページによって分けて印刷。

STEP 2 切り取り・貼り付け
上述の手順のように、パワーポイントのスライドを12.5 cm×12.5 cmに設定し、PDFにし、B5用紙に2in1で印刷すれば、原稿を切ってそのままノートに貼れる。ベタつき防止のため、のりよりも両面テープを推奨。ページによって、切り抜き方、貼り方を変えるのもよし。マスキングテープやシール、色鉛筆、マーカーなどで追加デコレーションするもよし。

 

<カバー製造工程>
型紙をきっちりつくっておくことと、こまめに折り目をつけること、アイロンを使うことが、簡単に綺麗なカバーをつくるこつ。

STEP 1
布を広げ、よく折り目をつけた型紙を置く。たるみができないように、かつ折り目に重ならないように、待ち針で止める。チャコペンや鉛筆で、布に型紙の輪郭を写す。あとでその線に沿って切れるよう、できるだけ途切れさせない。

STEP 2
型紙の折り目に沿って、型紙を内にする形で、布と一緒に折り曲げる。布が伸びない程度に、へらで全ての折り目をつける。

STEP 3
待ち針と型紙を外し、先ほど引いた輪郭線で布を裁断する。そのうえで、全ての折り目にアイロンをかける。

STEP 4
四隅を、少し斜め三角に折り曲げて、アイロンをかける。あとで折りたたみやすくなる。

STEP 5
完全には折りたたまない下記の状態にし、布の端から5mmくらいの幅で、一周ぐるっとミシンをかける。ミシンを使わず、STEP 6の4ヵ所縫いだけでもカバーにはなるが、ミシンをかけたほうが綺麗で丈夫。

STEP 6
折りたたんで、待ち針で固定し、写真の青線部分4ヵ所を浅いブランケットステッチで始末する(ステッチの動画は参考資料3へ)。先ほどと同じミシン糸で二本取り。簡単にかがり縫いや、あえて違う色の糸を使うのもよし。ここもミシンで縫いたい場合には、型紙設計時に余裕をもたせ、縫う前にノートが入るか確認を。

STEP 7
最後にアイロンをかけ、しわを取る。

 

5 品質検査
ノートとカバーを合体させ、うまく開くか、糸の不始末はないかなどを確認。本来は引っ張ったり、冷やしたり、熱したり、何千回と開閉を繰り返したりしなければならないところが、全数(といっても1だが)検査、目視検査のみ。

 

6 出荷
夫に渡す。夫が読む。よろこぶのを見て私もよろこぶ。旅に出る前、この時点までで、ふたりしてこんなに楽しめるのだ。すごくエコでお得な感じがする。

 

7 ユーザーレビュー
実際に旅の準備、旅の最中に使う。旅が終わったら、感想ページに感想を綴る。旅の思い出は、カバーに挟んでおく。こういうページがあったらよかった、次はこんな旅にしたい云々があれば、メモに残し、合わせて挟む。あとで読み返すと楽しい。

スタンプラリーのように、巡るスポットで都度何かを書き込めるしおりや、しかけ絵本のようなしおり、クロスステッチのカバーのしおり、「15ページに飛べ」と書いてあるようなゲーム絵本みたいなしおり、かるたになるしおり、全て暗号やナンプレからなるしおり、コラージュでできたしおり、QRコードで自作のwebページやアプリと連携できるしおり、お互いに詳細を秘密にしてつくって交換し、どこかで待ち合わせるしおり、何かしらのシリーズもののしおりもいいなあと思っている。

どの旅も、「なかよしでいよう」という大目的はあらかじめ決まっている。というか、ふたりでいる暮らし自体がそうだ。どう歩き、希求し続けるか。今のところの私たちは、いっしょにつくる、わりとガチでつくる、新しいことに挑戦する、PDCAをまわす、という手段がとても楽しい。普段はゆるく、無計画で、抽象的な話で盛り上がり、個々の世界にいる分、たまに形あるものに集中することでバランスを取っているのかもしれない。

 

 

参考資料

1 Canva
https://about.canva.com/ja_jp/

2 無印良品 画用紙絵本ノート 小・12枚・約130×130mm
https://www.muji.net/store/cmdty/detail/4548718800667

3 武庫川女子大学生活環境学科・生活造形学科
デジタル教材 基礎縫い編 ブランケットステッチ
http://www.mukogawa-u.ac.jp/~kankyo/laboratory/edu/d_kyozai/kisonui/sew10/sew10.html