新しい言葉をつくっちゃえ!

正しい言葉遣いも大切だけど、言葉を新しくつくったり遊んだりするのも楽しい。フィールドワークで抽出された我が家の用語集と、浮かび上がった詩。

 

Family lexicon is:
– a bundle of old love letters
– important energy
– regular exercise
– playing in a particular style
– to relax completely and enjoy
– to understand or respect other people’s ideas and behaviour
– supporting changes in some systems that give people more freedom

ファミリーレキシコンは
何度も読み返したラブレターの束
大切なエネルギー
いつもやってるエクササイズ
こだわりの遊び
うんとくつろいで楽しむこと
相手の考えや行動を理解すること、敬うこと
もっと自由なシステムに変えていくこと

by たきじり(Longman Active Study Dictionary 5th edition、 “lexicon”掲載ページ、見開きで見つけた単語から作成(写真の蛍光ペン部分))

 

オースティン・クレオンさんちのオーウェンくん(6歳)は、お父さんの影響で、自分で絵を描いたり、音楽やzineをつくったりしている。かわいいので、私も新作を楽しみにしている。このツイートにも「いいね」した。

訳すなら、「 “Loveheart”は今や我が家の定番の言葉です」。 “lexicon”は、「ある特定の個人・領域などにおける用語集」のこと。本屋で買える「正式な辞書」には載っていないけど、オーウェンくんが母の日やバレンタインで使うので「オースティン家の辞書」には載っている言葉だという意味。

「ファミリーレキシコン」、我が家(2人暮らし)ではどうだろうとフィールドワークを始めた。普段通りの生活の中に観察者の自分を置き、会話の分析と記録を続けた。

あまり意識していなかったが、我が家は言葉の積極的な開発と便乗が推奨される環境である。新しい単語や意味が意図的に、事故的に、偶然にひょいひょい生まれ、流行り、廃れていく。音や意味の変化を経て定着に至ったものもある。書き言葉よりも話し言葉のほうが発達している。

 

うちのファミリーレキシコン
(各項目の最後は例文)

こてね
仕事がうまくいった、楽しいことがあったなどで精神的に満たされている、ほどよい身体的疲労がある、おいしいごはんを食べる、酒を一定量以上飲む、という条件がそろった上で、風呂に入る前にこてんと寝てしまうこと。ぎりぎりまで「お風呂には入るよ」「横になってるだけで眠ってない」とつぶやき続け、最終的には相手に嘘をつく。幸せそうな顔に免じて、ごくたまにであれば許される行為。「こてんね」からの音変化。

「昨日はこてねしてごめん。ほんとうに反省してる」

 

ぽてね
夫が、山盛りのポテトサラダを食べたあと、こてねに至ること。ポテトサラダはカロリーが高いため、こてねしないことを条件に提供されることが多く、こてねと違って重罪である。

「ぽてねするって、人としてどうなの?」

 

解体/解除
妻が洗ってカゴに積んだ食器を、夫が元の場所に戻すこと。心ここにあらずで気が急いている場合、いつもの場所とは違う場所に積まれた皿で、ピサの斜塔が建つ。2種類あるのは、初回の聞き間違いによる。どちらも譲らずどちらも定着。

「これつくってる間に、解体しといてくれないかな」
「わかった、解除する!」

 

接触不良
道具、とりわけ台所用品が妻の手のサイズや目的、作業動線に合わないこと。

「卵焼き器、接触不良だったんだけど、小さいものに変えたらめっちゃ使いやすくて楽しくなったーーー!!」

 

人気者
風邪っぴき、病人。ウイルスからモテモテの状態。

「だから言ったじゃん、寒い格好しちゃだめだって」
「ほら、ぼく人気者だから仕方ないよ」

 

自由研究
きらめくアイデアに心を踊らせ、夜や週末などのあるひとかたまりの時間、自室にこもって実験やものづくりにいそしむこと。夫のは今仕事で必要なことの数歩先のこと。あるいは関係があるかはわからないが、すごい発明に思えるもの。妻のは書きもの調べもの。専門を別にしながらも、発生したエネルギーには敬意を払いたいので、研究終了後の会話には「おうむ返し」のルールを採用している。

「今日はサーバの自由研究をしたんだ!(中略)すごいでしょ!」
「サーバの自由研究をしたんだね!それはすごいね!」
「そう思うよねー!うんうん」
(ここまでセット)

 

刺す
夫が、自分のヒゲが伸びているのをわかっていて、顔を妻に近づけようとすること。脅し文句だが、対する返答も脅し文句になることが多い。

「いっしょに行ってくれなきゃ刺すよ」
「夕飯出さないよ」

 

業務委託
得意なことを任せること。キッチンとネットワークは年間包括契約、それ以外は個別契約。

「これ、業務委託したいんだけど」

 

パスタマイスター
夫の肩書きのひとつ。役職が人を育てる。お湯を沸かし、塩と麺を計量し、鍋に入れ、タイマーをセットし、茹で、ざるにあげる一連の流れを担当する高度技術専門職。ソースやサラダは専門外のため、任務終了後はカトラリー設置部門へ異動。

「パスタマイスター、そろそろ出勤のお時間です」

 

同期
街の屋外ディスプレイでスーモの広告が流れ始めた瞬間に、妻がMacBookに繋がれたiPhoneのように、スーモの歌を口ずさみ始めること。

「スモスモスモスモスモスモスーモ♪」
「同期したね」

 

キーステーション
旅行先で起点にする駅。近くに宿泊することが多い。

「今回の旅は広島駅をキーステーションにお送りしましょう」

 

潜入
地下も含めて何階もあるような大きな建物に2人で入る場合に、夫が使う。悪いことをしていないのに悪いことをしている気持ちになる。

「さあ着いた。潜入するよ」

 

調査
店で品物を見てまわること。「潜入」と合わせ、スパイ色が強くなる理由は不明。

「今日はあのパン屋を調査しなきゃ」

 

毎日言葉遊びをしているような、即興芝居をけしかけているような、機転を試しあっているような感じだな。負けないぞ。

 

 

春色の味つけ

0.3のシャープペンを買った。なじみのDr.Grip、HDGS-60R3-P、ピンク。

普段は黒いものを買うことが多いので、カラバリにブラックがなくて困る。「これは(今まで持ったことが)ない」と消したソフトグリーン、ブルー、バイオレット。残ったピンクとソフトブルー。決められない。Dr.Gripの0.3は外せないので、どちらかで決めなきゃいけなくて理由を探す。どうでもいいものの中から選ぶのは苦手である。

ピンクとソフトブルー。母が幼い私と妹に与えた、服の色の選択肢。うーん。

今日のラッキーカラー? 今年のラッキーカラー? 知らない。

補色のグリーンとイエローを含めて、この先好んで着たり持ったりする? たぶんない。

顔を上げて、最初に目に入った人の服の色で決める? レッド。

せめてレッドがあったらな。まだ持ってるほうだしな。赤系ならピンクかな。いや、かわいすぎるかな。

うーん。

ピンク、ソフトブルー、ピンク、ソフトブルー、ピンク、ソフトブルー。うーん。

ピンク、ソフトブルー、ピンク、桃色、ソフトブルー、水色。おや?

桃色、水色、桃色、水色、桃色、水色。

桃色、桜色、水色、空色。

桜色、空色。

桜と空なら、桜かな。ちょうどもうすぐ春だし。私春生まれだし。うんうん。

と思ったところでたいへんびっくりした。ピンクとソフトブルーを桜色と空色に言い換えただけでスパークジョイ、ときめきが発生していたから。幽体離脱のように私を観察する私が、「きみ、こんなところでも意味づけかね、言葉なのかね」とあきれながら言った。これはどうでもいいものをどうでもよくなくする力、自分のためにコピーライティングする力なのだよと言い返し、会計へ向かった。

 

 

コピペ弁当の再定義

木曜日、弁当を作った。ゆかりごはん、とり天、玉子焼き、にんじんの明太きんぴら、蒸しさやえんどう。
金曜日、弁当を作った。ゆかりごはん、とり天、玉子焼き、にんじんの明太きんぴら、蒸しさやえんどう。

多めに仕込んでいたから、2日連続で同じ弁当になるのはわかっていた。全部おいしいからいいじゃんと思いつつ、金曜日は玉子焼きを2個から4個に増やし、申し訳なさを隠すように弁当箱に詰めた。

夫が横で紅茶を淹れていた。ふろしきで包む前に「昨日と同じでごめんね」と言うと、すぐに「とり天弁当2(ツー)やな!」と返してきた。

ツー。発売を楽しみにしているシリーズもののイメージ。ポケモンのミュウとミュウツーのように、進化を重ねているもののイメージ。瞬時の、簡潔な名づけに、「ぼくは食べるのを楽しみにしてる、玉子焼き倍量で進化したとり天弁当を!!」というメッセージを受け取った。完全な意図ではないかもしれないが、日々のやりとりの中で、虎視眈々とセンスをチューニングしている人だ。半分くらいは狙っている。

コピペ弁当のリネームで私の罪悪感を消し去り、知的好奇心まで刺激した彼は、好物のとり天を携えて颯爽と出かけていった。

 

 

2018年ふりかえり あれこれトップ3

アンラーニングの1年。がんばったこと、つくったものなど。

 

総括
今年は「アンラーニング」の年と決めていて、そのとおりの年にできた。

unlearning :いったん学んだ知識や既存の価値観を批判的思考によって意識的に棄て去り、新たに学び直すこと。日本語では「学習棄却」「学びほぐし」などと訳される。

2017年に体を治している時、この10年の思考の癖に気がついた。奨学金を借りて上京してから、留年しないように大学に通い、知っている人がいない土地で就職し、ひとりで海外に行って仕事をして、異動・転職するまでの間、自立やお金に固執して、不安を動力に、「お金や将来のことを考えてやっておいたほうがいいかも」「人に合わせて、期待されていることをやろう」と強く考える傾向があった。動けるようになってきた2018年の初めもそう考えていた。考えようとしなくても、頭が自然とそっちに行っていた。

そんな私を見かねて、夫が「不安から始めることの一切に反対」と言った。的確な助言だったと思う。あのまま働き続けても、稼いだお金を握りしめて病院に通い、お先に墓場へ行くだけだった。

とにかく自分と向き合うことに集中させてもらった。何が好きで嫌いか、何を作りたいか、作りたくないか、何を新しく学びたいか、何を維持すべきで、何を修正すべきか。どんなパターンが、どんな原因から生じているか。エネルギッシュ、ではないのでゆっくりと、たまに体調を崩しながら、ウェブサイト構築とジム通いを軸に、年初に望んだ習慣を作った。

たぶんこういうことは、つまり自分の心と体作りは、思春期から学生時代にかけて済ませておくべきことなんだろうと思う。私は別件で忙しくて、それどころじゃなかった。だから今さらだけど、今やらなきゃいけない。それが君の今の仕事なんだと、昔同様応援してくれて、何なら昔より嬉しそうな夫に感謝する。

 

■よくがんばったことトップ3
1位:ウェブサイト立ち上げ
自由度が高いということは、細かいところまで自分で決めなければならないということ。テンプレートがあっても、設定は白紙のところからひとつずつ決めていく。何が必要で、不要なのか。飽きないか。私が使いやすいか。来訪者が使いやすいか。諦めそうになりながらも一旦考え尽くせたこと、かつ実現の術を知れたことは、いつもと頭の使い方が違って鍛えられた。

2位:翻訳 (ヴァージニア・ウルフ「クラフツマンシップ」)
「訳し終わった!」と思ってからがスタート。ラスボスを倒したと思ったらラスボスじゃなかった、ということがそれはそれは繰り返し起こった。おかげで何十回も読んだし、深く読んだし、周辺情報も調べられた。ハイライトはこの部分:

伝記作家が、有益で大切な事実を伝えなければならない時、例えば「1892年、オリバー・スミスは大学で三等級だった」という事実を伝えなければならない時、彼はそれを表現するのに、5という数字の上に0をつけた記号を使うでしょう。小説家なら、「ジョンは呼び鈴を鳴らした。しばらくしてメイドがドアを開け、『ジョーンズさんは外出なさっています』と言った」という話を伝えなければならない時、読み手の利益と自身の満足を考慮し、メイドのそっけない言い草を言葉ではなく、3という数字の上に大文字のHをつけた記号で表現するでしょう。

“with a hollow 0 on top of the figure five” と “a capital H on top of the figure three” の訳出に、2週間もかかってしまった。作者が作った架空のイディオムなのだが、それが架空との注釈もないので、ネイティブなら知っているようなイディオムなのかと思ってものすごく調べた。結果、海外の知恵袋のようなサイトで、イタリア語のユーザーが私と同じ箇所で同じように悩んでいるのを見つけた。英語のユーザーが明るくフレンドリーに、「架空だからそのままでOKだよ!」と回答している。国境を越えて悩んだ友、助けてくれた友!勝手に一生忘れない!ありがとう!!!

ちなみに、名古屋外大で柴田元幸先生にお会いした際に、こういう困り方(作者が亡くなっている+現代じゃない+比較的マイナーで研究文献が少ない)をした時にはどうするのかと質問することができた。「大学内や各国にネットワークがあり、常日頃から助け合っている」とのお話をいただいた。

3位:本棚作り
本当に好きな本だけを集めて、かつ、効果的なカテゴライズで並べた本棚を作れた。長らく、本のサイズでざっくり収納するだけだったところを、試しにジャンルで大項目を決めて振り分けてみて、ボリュームがあるところは中項目に分けてみた。あーでもないこーでもないと言いながら何度も出し入れし、必要のない本を抜き出し、全体のバランスを整えたら、どの本も生き生きと輝くようになった。呼応してこちらもわくわくする。書店員になった気分。本棚作りの奥深さを垣間見た。

 

■多くの方々に読んでいただいた記事トップ3
1位:スタートレック お近づきプログラム
スタートレックおたくの夫と、その熱量に引き気味の妻。8年の壁を越える、愛と勇気と成長の記録。2018年夏の自由研究。

Twitter、Facebook、はてなの順でシェアいただき、Googleのおすすめ記事にも入れていただき、広く読んでいただけた。拡散の勢いがすごくて、「初心者が何を言ってるんだ」と怒る人も出てくるんじゃないかと冷や冷やしていたが、私の目に入ってくる限り、みなさん好意的なコメントだった。当たり前と言えば当たり前だけど、何かを好き、と伝える記事は、その何かを好きな人の間でシェアされていくんだな、と思った。何かを好きなことを、その何かを好きでない人に伝えるのは、本当に難しい。好きでない人に、好きになってほしいのに、こんなにすばらしいのに、うまく伝わらないという気持ちが、シェアしてくださった方々の中にちらほら見えた気がした。

2位:【翻訳】ヴァージニア・ウルフ「クラフツマンシップ」
翻訳が他にないからか、「ウルフ クラフツマンシップ」の検索結果でトップゆえ、来訪いただけている様子。

3位:無印の絵本ノートでつくる旅のしおり
当初は別のタイトルだったが、私の記事の中では珍しく「お役立ち系」かと思い、検索流入用に改題した。勉強になった。Google Analyticsを入れてないので詳細はわからないが、ぽつぽつ読んでいただいているよう。

 

■読めてよかった本トップ3
1位:『退屈をぶっとばせー自分の世界を広げるために本気で遊ぶ』
ぶっちぎり。あこがれのオライリーの本を買える日が来るなんて(技術系の出版社なので普段は縁がないのだが、本作りの思想が好きで追いかけていた)。

2位:『それがぼくには楽しかったから』
3位:『なるほどわかった コンピューターとプログラミング』
好きな人が好きなものの歴史を知るのが楽しいと、この本とスタートレックで感じた。マイクロヒストリーは、もっと読みたい切り口。

あまり小説を読めなかったので、来年はもっと。

 

■買ってよかったものトップ3
1位:Lenovo X260
キーボードを愛している。

2位:dretec タイマー T-544WT
ポモドーロテクニックのために購入。多機能のスマホよりも、単機能で、ボタンの感触がわかる道具を個々にもつ方が好き。残り10分や5分を知らせるアラームが鳴らない。自立する、文字も見やすい、文句なし。

3位:ニールズヤード アーモンドオイル
スキンケアの最後に、ラベンダーとゼラニウムのエッセンシャルオイルを混ぜたものを使っている。つるつるもちもち、にきびできない、かゆくない。

 

■鍛えた筋肉トップ3
1位:ハムストリングス(太もも裏面)
2位:大腿四頭筋(太もも前面)
3位:大殿筋(お尻表面)
6月から始めた筋トレ+有酸素運動。「大きな筋肉」を重点的に鍛えた。太くなるのかと思いきや、きつくなっていたスキニーパンツが緩くなるくらい、脂肪と筋肉が入れ替わって引き締まった。何度「(弱々しい)じゅんこが筋トレ?笑」と言われたことだろう。私も笑ってしまうよ、わかりやすく効果が出たからね。

ただ、鍛え始めたからって強くなったと過信するのはよくない。インストラクターさんも話していたように、筋トレ直後は体のエネルギーが筋肉の超回復に使われるため、体調を崩しやすい。もっと気をつけないと。

 

■おいしくできた干物トップ3
1位:いか
2位:紅鮭
3位:鱈
丁寧でナチュラルな暮らしにこだわりたいんじゃないのだ。おいしいものを簡単に手頃な値段で作りたいのだ。スーパーでさばいてもらい、塩麹を塗り、ラップでくるんで2~3日冷蔵。洗い流して、干し網に入れて半日干せば出来上がり。ぷりっぷりでおいしい。お弁当の定番おかず。夜のつまみにも。すばらしい。

 

■よくつぶやいた名詞トップ3
1位:言葉
2位:夫
3位:本
登録だけ2011年にしていて、今年からつぶやき始めたツイッター。テキストデータを簡易テキストマイニングにかけた結果は、意外じゃない。ツイートもいいねも、月や1年の振り返りに役立つとわかったので、来年も引き続き活用していきたい。

 

 

2019年は、学習習慣と運動習慣の維持と改善。勉強はスタディスキル全般、特に「読む」と「問う」をもっと深めたい。ブログで新しいプロジェクトも始めたい。関心が同じでなくてもいいから、学びを共有できる友人や機会を作りたい。運動は、ストレッチを探究することと、筋トレ:有酸素運動=50:50のところを、30:70にして、体を追い込みすぎないようにしたい。夫婦共々、風邪をひかないように、ひいても治りが早くなるように、策を考えて講じたい。がんばる。

 

 

 

参考

日本の人事部 人事キーワード アンラーニング
https://jinjibu.jp/keyword/detl/538/

User Local テキストマイニングツール
https://textmining.userlocal.jp/

 

 

12/16-20 名前を言ってはいけないあの人

大きな出来事があった日は、前後を含めて日記にしよう。

 

12月16日(日)
ハリー・ポッターの映画を観た。ずっと昔にレンタルした記憶はあるけど、内容がさっぱり抜けていた。おかげでおもしろくて、一気に4本目まで来た。数日間、なんとなく調子がよくなかったから、関心を外に向けられてよかった。

 

12月17日(月)
明け方、痛みと出血が止まらなくなった。夫が病院に付き添ってくれるとわかった時から、軽いパニック状態と、饒舌で快活な状態とを、自分がせわしなく行き来し始めたのを感じた。

かかりつけのクリニック経由で、初めて救急外来に行った。受付の人がお役所仕事で、時間を取られそうになる。かかりつけの医師からの電話を書き留めた付箋が、担当者間で共有されていなかった。夫が珍しく、夜までぷりぷり引きずる。

待合室にインフルエンザの人がいて、ふたりともマスクをつけた。CTで、検査技師に「お腹を3回輪切りにします」と言われてイカめしを食べたくなった。医師は基本的に落ち着いていて、無表情で、まっすぐ顔を見て話してくれた。私が想定問答集からはずれたことを尋ねたのだろう時には、すぐに目を逸らし、聞き取れない声でまごつき、ゆっくり言葉を絞り出していた。優しい人だ。痛みと出血はひどくなる一方だった。

帰宅して、薬を飲んだら発熱が始まった。関節も痛み、寒気もする。6,000円の課金で薬をゲットしたら、期間限定キャンペーンでインフルエンザがついてきたんだと思った。

 

12月18日(火)
「嘘みたい」「夢みたい」というのは、こういう日につかう言葉なんだと知る。前日の私はヴォルデモート卿とでも戦っていたんだっけ。痛みは残る、薬ありきの穏やかさ。

看病してくれる夫が、いつにも増して頼もしい。ひそかに、いい意味で「名前を言ってはいけないあの人」「我が君」(いずれもヴォルデモート卿の別称)と呼んで遊んだ。尊い。我が君が痛い思いをしないといい。

 

12月19日(水)
また少し回復した。映画の続きを観た。「その名を呼んではいけない」習わしをネットで調べ始めたらきりがなく、今は「そんなに読んではいけない」と気がついた。

肩慣らしで大学芋を作る。飴の煮つめ具合を間違えた。バニラアイスを乗せて食べた。我が君にも残しておいて、夜のつまみにお出しした。

 

12月20日(木)
我が君、健康診断の日。「就業時間中に血を採られて倒れるなんて労災だよ」と言いおいてご出勤。痛いのも血も病院も苦手でいらっしゃるのだ。聖なる血を採られたあと、しばらくベッドでお休みになるだろう。午後はいつもより伏し目がちで任務に当たられるのだろう。タコライスをお作りしてお待ち申し上げる。

 

 

Photo by Anh Nguyen on Unsplash

 

 

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