12/16-20 名前を言ってはいけないあの人

大きな出来事があった日は、前後を含めて日記にしよう。

 

12月16日(日)
ハリー・ポッターの映画を観た。ずっと昔にレンタルした記憶はあるけど、内容がさっぱり抜けていた。おかげでおもしろくて、一気に4本目まで来た。数日間、なんとなく調子がよくなかったから、関心を外に向けられてよかった。

 

12月17日(月)
明け方、痛みと出血が止まらなくなった。夫が病院に付き添ってくれるとわかった時から、軽いパニック状態と、饒舌で快活な状態とを、自分がせわしなく行き来し始めたのを感じた。

かかりつけのクリニック経由で、初めて救急外来に行った。受付の人がお役所仕事で、時間を取られそうになる。かかりつけの医師からの電話を書き留めた付箋が、担当者間で共有されていなかった。夫が珍しく、夜までぷりぷり引きずる。

待合室にインフルエンザの人がいて、ふたりともマスクをつけた。CTで、検査技師に「お腹を3回輪切りにします」と言われてイカめしを食べたくなった。医師は基本的に落ち着いていて、無表情で、まっすぐ顔を見て話してくれた。私が想定問答集からはずれたことを尋ねたのだろう時には、すぐに目を逸らし、聞き取れない声でまごつき、ゆっくり言葉を絞り出していた。優しい人だ。痛みと出血はひどくなる一方だった。

帰宅して、薬を飲んだら発熱が始まった。関節も痛み、寒気もする。6,000円の課金で薬をゲットしたら、期間限定キャンペーンでインフルエンザがついてきたんだと思った。

 

12月18日(火)
「嘘みたい」「夢みたい」というのは、こういう日につかう言葉なんだと知る。前日の私はヴォルデモート卿とでも戦っていたんだっけ。痛みは残る、薬ありきの穏やかさ。

看病してくれる夫が、いつにも増して頼もしい。ひそかに、いい意味で「名前を言ってはいけないあの人」「我が君」(いずれもヴォルデモート卿の別称)と呼んで遊んだ。尊い。我が君が痛い思いをしないといい。

 

12月19日(水)
また少し回復した。映画の続きを観た。「その名を呼んではいけない」習わしをネットで調べ始めたらきりがなく、今は「そんなに読んではいけない」と気がついた。

肩慣らしで大学芋を作る。飴の煮つめ具合を間違えた。バニラアイスを乗せて食べた。我が君にも残しておいて、夜のつまみにお出しした。

 

12月20日(木)
我が君、健康診断の日。「就業時間中に血を採られて倒れるなんて労災だよ」と言いおいてご出勤。痛いのも血も病院も苦手でいらっしゃるのだ。聖なる血を採られたあと、しばらくベッドでお休みになるだろう。午後はいつもより伏し目がちで任務に当たられるのだろう。タコライスをお作りしてお待ち申し上げる。

 

 

Photo by Anh Nguyen on Unsplash

 

 

自己紹介

1987年生まれ。

文学部 人文社会学科 英米文学専攻卒。
メーカーの人事部で、国内外の人材開発業務を6年。
事業部でのオンラインコンテンツ開発を経て、ブランディングデザインの会社に転職。
経営層の考えやデザインコンセプトの言語化、ディレクション、編集、各種ライティングを担当。

言語表現に心を奪われることが多いから、よく「言葉が好きなんだね」と言われる。
何をしても言葉に行き着くだけのことで、言葉にならないものは好きだし、言語の限界や記号化のつまらなさにはうんざりしている。
考えることや書くことに熱中すると、胃がきりきりして頭が痛くなる。
それでも、言葉を媒介に新しい世界を垣間見れたとき、人の見ている景色に触れたとき、「これはこうとしか言えない」ものができたときにはエネルギーが満ちる。
やれやれ仕方ないなと思うのは、言葉が好きということなんだろうか。

つくってきたもの、できることの記録はこちら: MY LIFE WITH WORDS