パターソン席

市バスの「パターソン席」から見えた、運転手さんの話。とっても綺麗だった。

 

 

市バスの運転席の反対側、いちばん前、他よりも高い位置にある座席を、「パターソン席」と呼んでいる。

ジム・ジャームッシュの映画、「パターソン」。
主人公のパターソンはバス運転手。
毎日の生活や目に映る景色、出会う人々からインスピレーションを受けて、こつこつと詩を書いている。
奥さんは出版を勧めるけれど、彼は乗り気じゃない。

バスを走らせるいつもの道を、出来たての詩で彩るシーン。
バスに乗って思い出した。
奇しくも、アメリカは左ハンドル。
気分はパターソンだ。

夕方、買いもの帰り。
白い手袋をはめた運転手。
足をゆったりと伸ばし、くつろぐように座っている。
ハンドルをふわっと持つ。
撫でるように回す。
ペダルをじわっと踏む。
やわらかさを保ったまま、ボタンを押して、ドアを開き、閉める。
ICカードをチャージしたいという人に、期待を裏切らないゆっくりとした声で、指差しつきの説明をした。
終始ピアノを弾くように、つつつと指先の余韻が残った。

降りる前に、足もとのノートを探した。
パターソンみたいに、詩を書きとめているんじゃないかと思ったのだ。